第202回
ゲラール直伝の店に行って見ませんか
人をご馳走するというのは
たくさんお金をかけることではありません。
身分相応の地味なもてなしでいいわけすから、
一杯飲み屋であってもよいし、
おでん屋か、やきとり屋であってもかましません。
でも安い料理屋なら安いなりに、
客を満足させる必要があります。
そのためにはふだんから安くておいしい店を
開拓しておく必要があります。
私は世界中でこのレストランが一番おいしい店、
いまが一番話題になっている店にも
千里の道を遠せず出かけて行きます。
ボルドーにワインを買いに行って、
そこから往復350キロを走って、
ポ・ト・フで有名なミシェル・ゲラールのレストランまで
夕食に出かけたことがあります。
13年たった今日でもなお印象に残っている晩餐ですが、
その時、ゲラールの店で修行していた
日本の若い料理人がおりました。
キッチンの一見習生ですから、
お店に挨拶に出してはもらえず、
私たちの帰る暗い道のそばに立って
「こんな遠いところまで
わざわざおいでいただいて感激です」
と深々と頭を下げました。
こんな片田舎にも日本人の料理人が勉強に来ているのか、
いまにフランス料理が日本料理になるぞ
と私は感心しましたが、
その時の青年がつい最近、
赤坂の乃木坂駅の近くにオーナー・シェフとして
「グランデール」という
小さなフランス料理屋をひらきました。
昼食は1500円から、夕食は5500円からで、
料理の天才ゲラールの直弟子だから、
ちょっとウジェニー・レ・バンまで
出かけて行った気分を味わえます。
ついでに申せば、シェフの名前は羽淵康彦、
港区南青山1−19ー7、電話番号は3796ー8083です。
こんな店で人をご馳走するのなら、
そんなに負担にはならないでしょう。
私は目を皿のようにしていい店はないかと、
東京はもとより私の行く先々で探しまわっています。
いつも行きつけの店に行くより、
3軒に1軒は新しい店に行くのが私の趣味なんです。
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