第154回
ベンチャーのチャンス到来ですよ
私はソニーを創設した井深大さんも知っていますし、
盛田昭夫さんも知っています。
ホンダの本田宗一郎さんも
私の家の上客の一人でした。
私の家は週刊誌に書かれるような
大豪邸ではありませんが、
食べることに熱心なので、
個人の家としては珍しく専門のコックを抱え、
多くのお客をしてきました。
文人墨客からはじまって、
私の好きな人を次々とお招きしたので、
盛田さんも本田さんも私の家のお客でした。
おかげで世界に名だたる
日本の実業家や創業家や芸術家が
どんな人かを私なりに見ています。
実業家たちの中には
戦前から続いている名門もたまにはありますが、
大抵は昭和30年代あたりから一頭地を抜いて
大をなした企業家たちが多いですね。
それまでは無名でお金もなかった人たちが
自分たちの新しい事業を開発し、
うまく時流に乗って、
なかには世界的な大企業に発展した者も
少なくはありません。
実際にそういう実例を目の当たりに見ているので、
人が事業をつくるのであって、
お金が事業をつくるのでないことがよくわかります。
それも世の中の
大きな変わり目になっている時がチャンスで、
そういう時にたまたまはじめた仕事が
うまく時流に乗ると
たちまち大をなしてしまうんですね。
たとえば昭和30年代は工業化による高度成長期で、
物づくりが産業界の本命でしたが、
この時期にアメリカの流通業の
視察旅行を企画した人があり、
そのツアーに参加した若い小商主の人たちが
アメリカのスーパーの隆盛ぶりに度肝を抜かれて
帰ってきました。
そのショックを自分の商売に素直に生かして
郊外の小さな店からはじめたのが
イトー・ヨーカ堂やダイエーやジャスコになったんです。
最初は10坪とか、30坪とかいった
小さな店からはじまっているのです。
いま日本ではじまっているベンチャー・ビジネスと
そっくりだと思いませんか。
チャンス到来ですよ、ピンチが長く続いたあとですから。
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