第155回
情報を運ぶ新しい乗物はいかが

メーカーの時代が終ったら、
次は何の時代になるのでしょうか。
世間ではITの時代だと言っています。
工業化の次は情報化だという言い方もあります。

次は情報化の時代だということは
何十年も前から言いはやされてきました。
アメリカの経済学の本を読むと、
早くからそういう具合に書かれていましたが、
観念的には理解できても、
本当のところあまりピンと来ませんでした。
だって携帯電話から世界中に
電話をかけられるようになったのは
ついこの数年のことにすぎないし、
若い人が本を読む代わりに
インターネットの虜になるのも
つい最近のことです。
物よりも情報を重視すると言ったって、
情報は人々の行動に対して
判断のデーターを提供するだけで、
それによって何でも
間に合ってしまうということじゃないですものね。

たとえば、どこに行って食事をしようかという時、
昔なら自分の行きつけの店か、
人に教えてもらった店か、
でなければ新聞雑誌やテレビや本などに
紹介された店に行きました。
いまはそのほかにインターネットを叩くと、
必要な情報が出ています。
その分、新しいデータがふえましたが、
それを見たら、
食事をしに行かなくてすむことにはなりません。
レストランを経営している人から見ても、
お客に知られる機会が1つふえただけで、
お店を繁盛させるさまざまの重要な条件に
変化はないのです。

したがってITの時代になったと言っても
情報を伝達する新しい乗物が
発明されたというだけのことで、
その乗物に何を乗せたら商売になるのかは
まだこれから研究しなければならないことです。
もちろん、画期的なことであることは
間違いありませんが、
蒸気機関が発明された時も世の中が大きく変わったし、
自動車が発明された時も世の中が大きく変わりました。
蒸気機関やガソリン・エンジンは
物や人を運ぶ手段を一変させましたが、
今度新しく発明されたのは情報を運ぶ乗物でしょう。
この乗物に何を乗せるかに
いま世界中が神経を集中させているところです。    


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