第149回 
金銭無情とはこのことです

「栄枯盛衰は世の常」と言いますが、
株式市場の隆替を見ていると、
その感を一層深くします。
石炭や繊維が成金をつくったこともあれば、
鉄屋や造船屋がもてはやされたこともあります。
家電メーカーや自動車メーカーが
日本の繁栄を代表したこともあれば、
不動産屋と銀行が
我が世の春を謳ったこともあります。
それと入れかわって、
いまは電話屋とインターネット屋が
肩で風を切っている時代でしょうね。

こうなることを
誰もが予想できたわけではありませんが、
気がついて見たら、
株価がちゃんとそれを私たちに教えてくれています。
ヤフーの株のように1株が1億円という
前代未聞の高値をつけたものもあれば、
1株何百万円(但し額面は一株5万円)という
ベンチャー・ビジネスの株が珍しくなくなりました。
発行株数に時価を乗ずると
何兆円の総額になる株が続出して、
世界有数の大富豪が誕生しましたが、
そういう時価総額は
風船をふくらませたようなものですから、
いつ破裂してパアになるか
わかったものではありません。
企業家の夢は時価総額をふくらませて行くことだと
豪語する若い冒険企業家たちもおりますが、
そのうちに夢から醒める日も来るでしょう。

そういう新しい夢がふくらんで行くかげには
世の中から取り残されて次々と財産を失い、
時代から淘汰されて行く
かつての成金や企業家たちがおります。
財産家がどうして財産を失うかというと、
財産の扱い方を間違うからです。
日本で言えば、成長期に土地が上がり続けたので、
バブル時に銀行にすすめられるままに
何十億円、何百億円と借金をして
不動産に投資した人は、
不動産が値下がりした上に
何年にもわたって収入がなく、
借金の利息を払い続けているうちに
全財産を失ってしまったのです。

たったこれだけのことで全財産を失うのかと
信じられないかも知れませんが、
たったこれだけのことで没落するものなのです。
お金はその扱い方を間違えた人のところには
長く居てくれないものなのです。    


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