第136回
メーカーの時代は一巻の終わり
日本は物づくりに成功して金持ちになった国ですから、
物づくりにとてもこだわります。
経済界の序列もメーカー中心にできていて、
製鉄会社とか電気会社とか自動車メーカーのトップが
財界総理に選ばれ、銀行や証券会社、
さてはデパートやスーパーの社長、会長は
たとえ営業額で一流メーカーを凌駕するようになっても、
タカが商人風情で、と見下されてきました。
鉄が産業界のコメとして尊重され、
物づくりが国力の源泉と考えられた時代には、
その実力から言っても、
社会的なウエイトから言っても、
メーカーが上座に座ることに
異議を唱える人はいなかったでしょう。
精々のところ、素材メーカーと家電メーカーや
自動車メーカーの順位が入れ替わる程度のことで、
メーカー優位の秩序に揺るぎはありませんでした。
ところが、生産と販売の力関係が逆転して
販売力が物を言うようになると、
流通業やサービス業の実力を認めざるを得なくなり、
更に工業製品の過剰生産が顕在化するようになると、
日本を代表する基幹産業に赤字が続出するようになって、
既成秩序が崩壊寸前まで追い込まれてしまったのです。
その理由はどこにあるかというと、
農業に豊作貧乏があるように、工業社会でも
過剰設備が常態化して生産能力が有効需要を
オーバーするようになってしまったからです。
一番わかりやすいのは自動車業界でしょう。
おそらく世界中で売れる自動車の
倍の生産能力があると思います。
日産自動車がおかしくなったり、
世界中の自動車メーカーが
再編成に血眼になっているのは、
農業で起こっていることが
工業の社会にも起こるようになった証拠です。
もちろん、これで工業の存在価値が
なくなるわけではありませんが、
明らかに一巻の終わりです。
いままでのやり方では駄目ということは
新しいやり方をする人に
チャンスがまわってきたということです。
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