第75回
「中国の旅、食もまた楽し」が出ました
私がはじめて北京の土を踏んだのは
1988年9月10日ですから、
もうかれこれ12年になります。
あの頃は中国に入るのに、
中国のどこかの政府機関が
招聘状を出さないと入国できませんでしたから、
いま考えてみると隔世の感があります。
私が中国投資のため
台湾の企業家たちを40名ほど連れて
上海入りをしたのは1991年8月のことであり、
翌92年の年頭には
小平が経済特区の視察を終えたあと
上海で有名な改革開放政策を打ち出しました。
私が上海の浦東開発区にビルを建てるという
具体的なプランを持って再度、
上海入りをしたのはその直後でしたから、
大陸の常連になってから
既に8年の歳月がたっています。
この8年の間に、
私はほとんど毎月のように中国に飛んでいますが、
旅行の好きな私のことですから
仕事につかう時間の他はできるだけ
行ったことのないところを旅してまわっています。
そういう私に目をつけて
中国の旅行記を書かないかと誘われ、
小説新潮誌に3年にわたって
「中国の旅また楽しからずや」を連載しました。
昨年末に漸く完結したので、1冊の本にまとまり、
新潮社からつい最近出版されました。
執筆した枚数が原稿用紙にして540枚にものぼり、
旅行に持って行くには迷惑なボリュームですが、
行った先々で退屈しないことは私が保証します。
名所旧跡はガイド・ブックを見れば書いてありますが、
その町の歴史から人々がどんなことをやって
メシを食っているかという町の産業や
どこに行ったらおいしい食事にありつけるかという
レストランの案内まで、
とりわけ私が推奨する店や料理については
ホテルで聞けばすぐにわかるように
記述してあります。
新潮社の担当者は
これは邱永漢食味シリーズの1冊ですから、
「中国の旅、食もまた楽し」にしましょうや、
と本の名前まで変えてしまいました。
「旅が好き、食べることはもっと好き」
「旅は電卓と二人連れ」に続く
3匹目のドジョウを狙っているのでしょうね。
中国の旅行に出かける人は
ぜひ読んで下さい。
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