第57回
ニュービジネスのチャンピオンになろう
私が一番興味を持っているのはお金儲けではありません。
新しい仕事です。
文章を書いたり、講演したりするのも、
同じことをくりかえしているわけではありませんから、
新しい仕事です。
それが物をつくったり、販売をしたり、
サービスを提供して、その結果、お金儲けになっても、
もちろん、かまいません。
人が喜んでお金を払ってくれるのは、
お金を払うだけの値打ちがあるからです。
アメリカでは大きな商売をやったり、
人の何倍、何十倍も収入があると、
それだけ社会に功献しているんだという考え方があります。
私がはじめてロスやニューヨークに行って
日本人会で講演をした時、
主催をした新聞社の社長さんが私を紹介するのに
直木賞の作家だとか、「金儲けの神様」と呼ばれている
経済評論家だとかいったことのほかに
私が何十社の会社のオーナーをやっていて、
一年に何百万ドルの収入があるということまで
持ち出すのにはいささか閉口しました。
日本ではいくら何でもそんな紹介の仕方はしませんよねえ。
同じ日本人でもアメリカに長く住んでいると、
バナナみたいに皮は黄色でも一皮むくと、
中身は白くなってしまうのでしょうか。
でもよく考えてみると、経済が発展して、
そのおかげで皆が豊かな生活ができるようになった国では
立派に通用する一理も二理もあるリクツではありますね。
それに比べると、停滞の歴史が長く続いた
アジアの国々では、
権力をカサに着て庶民からお金を捲き上げた殿様とか、
飢饉や物の不足した時に買い占めをした商人とか、
人を瞞したり、脅かしたりしたヤーさんの親分が
金持ちになっているので、
金持ちのことをよく思わない人がたくさんいます。
その伝統があるせいで、
経済の発展に功献することによって金持ちになった人まで
肩身の狭い思いをさせられてきました。
それが漸く様変わりするところまできたようですね。
新しい事業を開発して成功した人が
若い人の間で英雄視される時代になったのですから。
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