「衣」「住」から「食」へ
同じことがそれぞれの業種についてもいえる。スーパーの進出によって、スーパーが扱っている商品を売っている商店街の零細業者は、大半がピンチにおちいってしまった。店じまいをしたのも少なくないが、残っている店も売上げが激減して気息奄々の状態にある。こういう業種の零細業者にとっては、魚の通り路はとっくの昔に自分の家の前からスーパーの前に移ってしまったようなものである。
しかし、具合が悪くなるのは零細業者だけではない。消費者の購買心理に変化が起こってくると、スーパーも例外ではなく、魚の通らなくなる漁場で釣りをしているような業種には、同じように不況が襲ってくるのである。
たとえば、家具屋はかつて成長産業であったし、建築ブームと共に拡大の一途を辿ってきた。まず大衆製品が売れ、続いて高級嗜好でもう一度ブームがあった。また昔風の嫁入道具を買った人も、都会の団地やマンションのサイズには合わないので、新婦さんが東京に住むと団地サイズの家具を買いなおさなければなかった。そのたびに家具屋は量産に拍車をかけ、その中には一〇〇億円台の年産をするスケールのものも現われた。
しかし、建築ブームが一巡し、家の中が家具でひと通り充たされるようになると、あとは需要が鈍化し、よほど高級な家具に入れかえる気でも起こさなければ、家具を買う人がなくなってしまった。私の知っている家具屋の中には自動車の製造工場に負けないくらい生産工程を自動化した会社もあるが、いまでは生産能力がありあまって低速運転するよりほかなくなっている。操業度が下がると採算割れになるのが工業生産の常識であるから、コストダウンをはかろうと思えば在庫がふえるし、在庫をさばこうと思えばダンピングがおこる。デパートで家具の大バーゲンがくり返し催されるようになったのは、こうした事情とかかわりがあるのである。
また、たとえばデパートの衣料品売場を見ていると、実用品が片隅に追いやられて、ブランド商品が大きなスペースを占めるようになった。スーパーの場合は、先にも述べたように、実用品が主流を占めてきたし、いまさらブランド商品に切りかえようとしても、ブランド商品のメーカーが必ずしも商品の提供に応じてくれないから、多少の高級化はできても、実用品のイメージから脱却することはできない。したがってメーカーの生産過剰をそのまま反映することになって、かつてのドル箱だったのが、「利のうすい」売場に転落してしまう可能性が強くなって、とりわけデパートと競合関係にあるスーパーは赤字を強いられることになるから、実用品売場を縮小して専門店化するよりほかなくなる。地方の中型スーパーがまず中央の大型に食われ、続いて大型スーパーが自ら変質してデパートに近づくか、逆にショッピング・センター化するかしない限り、衣料品では採算がとれなくなってしまうものと思われる。
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