第94回
離婚が増大するアメリカ
アメリカでは、
ニ組の夫婦の中で一組が離婚をするという。
離婚の理由で最も多いのは「性格の不一致」であるが、
そんなことは今に始まったことではない。
昔昔から人類は性格の不一致に悩まされながら
生きてきたのであり、
それでも離婚しなかったのは、
お互いに耐えがたきを耐えて、
我慢をしてきたからである。
なかでも、女性がそれを我慢してきたのである。
ところが、アメリカで女性が
突如としてこらえ性を失ってしまった。
「弱き者よ、汝の名は女なり」の昔から、
イギリスの伝統を汲む国々では、
法律も世論も女の味方をしてきたから、
女が勘忍袋の緒を切らすと、
その理由の何たるかを間わず、
女が不満を爆発させたのはよくよくのことにちがいないと、
頭から女に同情し、女に有利に事態の打開をしようとする。
たとえば、アメリカで離婚沙汰になると、
非が女性の方にあっても、
裁判をすれば、ハンで押したように、
男の方が敗退をする。
男は財産があれば、財産の半分を女に渡さなければならないし、
今まで住んでいた家は女に与えて、
自分の方が荷物を片づけて出て行かなければならなくなる。
また、子供たちを男親の方がより多く愛していて、
面倒をよく見てきた家庭でも、
子供たちはほとんど必ず女親の方に引きとられ、
その養育費を払うよう命令される。
たまたま離婚後、失業して養育費が払えないために、
刑務所に入れられている人もあるし、
刑務所行きを免れるために、
サラリーローンから金を借り、
その返済に追われている人もある。
最も哀れをとどめたのは、
裁判所の判決で、月に一回、
妻に引きとられた子供たちに会いたいばかりに、
別れた妻の住んでいる家から
そう遠くに引っ越しすることもできず、
近くに職を探してとどまっている、
いわゆるシングルファーザーと呼ばれている人たちである。
別れた妻は、子供たちに、
お前たちの父が如何に悪人であるかを
盛んに吹き込んだりするから、
子供たちからそっぽを向かれる父親もいるし、
僅かな面会時間に、子供に好かれたいばかりに、
身分不相応なプレゼントを子供にしたり、
子供にせがまれたら
何でも望みをかなえてやる父親もあるそうである。
これでは父親としての威厳をたもてないばかりでなく、
おそらく子供の教育は
完全にお留守になってしまうであろう。
アメリカに非行少年が増え、
治安が日増しに悪くなるのも
決して偶然の出来事ではないのである。
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