第248回
そのまま下手とは限らない
「デンマーク人は鈍いねえ!」
日本人補習学校の父母と講師との食事会で、
ゴルフ自慢のお父さんがあきれて言いました。
「うちのあの鈍い娘が、縄跳びでクラスで一番だって」
私はその時に、学童保育園で小さな子供とスポーツをやってみて、
皆が不器用で苦労した頃の話をしました。
ルールを教えてゲームをしようとしても、
思い切りは良いが不器用で、なかなかスムーズにいきません。
テニスなどでも、ラケットを振り回してすぎて、
球がこちらに来ないので、
付き合うのもいいかげん嫌になってくるのです
ところが、いつも私とテニスをしたがっていた子が
ティーンエイジャーになると、突然、
コートに球が返ってくるようになりました。
そして半年の間に、私はかなわなくなりました。
私達がオーストリアに初めてスキーに行ったのは30年も前です。
谷間のホテルのある曇り空の村から、リフトに乗って雲を抜けると、
山の上には青空と白銀の世界がありました。
粉のような雪で、踏み心地良く、滑り心地も良いのでした。
デンマークはスキーをしたくても山が無いのです。
近くのノルウェー、スウェーデンは施設が無きに等しかったので、
デンマーク人のアルペンスキーはオーストリアから始まりました。
私達はデンマークの団体旅行に参加したのですが、
その頃のデンマーク人はスキーが初めての人ばかりのようでした。
団体旅行者は、団体でレッスンを受けて入る人が多いのですが、
見ると、皆が物凄く下手で、不器用なのです。
一方、スキー場には若い大変上手な人もいて、
話かけてみると、夏のオーストラリアから
雪を求めてやって来た人だったりしました。
それが今は、デンマーク人も上手な人が随分増えました。
飛行場で、ドイツでビオラを演奏している
日本人女性と話をしたことがあります。
その人によると、彼女は遅くから始めたから
バイオリンは無理だそうで、ビオラにしたということです。
そして、
「日本人は短期間で何とか弾けるようになります。
ドイツ人は不器用だけれど頑張って、ずっと進歩していきます」
と言っていました。
この近所の国の人の運動神経は、
発達の初期に時間がかかるのかもしれません。
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