第247回
雇用が増える国際化
EUの新条約は瀕死の状態になり、
来年まで検討期間をおくようです。
EUの国民が反対する理由には、
時の指導者に人気がないことなどもあるそうですが、
一つには失業問題があります。
旧EU圏の賃金労働者が、
東欧やトルコの安い労働力に職を奪われる怖れが、
否決の票を増やしました。
デンマークでは1980年から2002年までに、
20万強の仕事が消えてなくなりました。
日本なら約100万人分の仕事が無くなった勘定になります。
しかし、その間に24万の新しい仕事が生まれて、
差し引きでは仕事は増えていることになります。
結果はそうなっていますが、
これだけでは全体像を良くあらわしていないようです。
今まであった古い会社が、
少しづつ雇用を伸ばしてきたのではないのです。
古いタイプの会社は、
効率を良くするためにリストラで雇用を減らし、
潰れる会社も、まず段階的に労働者を減らして行きます。
その一方で、新しく立ち上げた会社が、爆発的に雇用を増やして、
その数が失業者を今まで上回っていたのです。
これがこの22年間のだいたいの構図だそうです。
デンマークには雇用省があって、雇用専門の大臣がいます。
雇用省の調べでは、
昨年は、失業者の82%が1年以内に新しい仕事に就くか、
再教育を受けに学校に通っているそうです。
これは、失業保険の支払い期間の長い、
のんびりしたデンマークにしては、高い数字だと思います。
「新しい仕事先は、以前の会社の給料より、
はっきり”良い”とは言えない」
と、ちょっと図々しいような分析もありますが、
年功序列もないので、
転職しても、給料が下がるわけではないようです。
元々労働者の移動が多いので、
順応性のある労働マーケットを形成している、ということです。
失業保険の出る期間が長い。転職に違和感が無い。退職金が無い。
こういったことが、この場合はプラスに働き、
失業が日本より深刻でないようです。
「技術革新が国際化時代の失業からデンマークを救う」
と、雇用省は発表しています。
古いタイプの仕事を今まで通りやっていたのでは、
中国や東欧に仕事を取られます。
しかし、それらの国は、
先進国の新しい仕事の輸出先となる大きなマーケットでもあります。
中国や東欧に移動して、その国にある古い仕事を、
効率良い高品質なものに変えて、
大きく展開している会社もあります。
これらは総て、雇用も増やしているのです。
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