第178回
なるべくならお金持の町
シシリアのタオルミナの町の、
見晴らしのよいところに雰囲気の良いホテルがあり、
日本人観光客の団体が出入りしていました。
有名人も暮らして、世界的に有名な所だそうで
―なるべくなら、お金をたくさん持っている方が良い町です―
と、デンマークのガイドブックには書いてあります。
アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」という映画がありました。
1976年モントリオールオリンピックの女子体操で、
ルーマニアのナジャ・コマネチという少女が
10点満点を続出させました。
彼女は、「好きな男性は?」とインタビューされて
恥ずかしそうに「アラン・ドロン」と答えたそうです。
中年になってからも、依然として若い女性に人気があったのですね。
その主人公のドロンが、
犯罪を強行して大金を手にした後で高飛びしようとしますが、
行き先はこの「タオルミナ」でした。
この美しい町に逃れて、楽しく生活するのを夢見たのでしょう。
この古代の町が、近年再びこのような町になったのは
ゲーテが絶賛してからで、
ゲーテの来た頃はまともな宿屋もなかったそうです。
この町から少し離れたところに、
ローマと争って負けたカルタゴの町の跡があります。
ギリシャ、カルタゴ、ローマ、サラセン、ノルマンと
様々な国がシシリアを分け合い、奪い合いを繰り返したそうです。
カルタゴの跡は、
私達はチュニジアでよく保存されたのを見ました。
そこは、石の道や建物や、娼館がくねくねと曲がる道にあって、
人目に付かないように工夫されていること、などが面白かったです。
象を連れてアルプスを越えて、
裏手からローマを襲った奇想天外の将軍ハンニバルは、
このカルタゴの人です。
もっともローマに着いたときは、
象は1匹し生き残っていなかったそうです。
しかしローマ兵はローマから消えていて、肩透かしをくらいました。
この事件の後ローマはカルタゴを怖れて、
演説のあとに「しかしカルタゴは滅ぼさねばならぬ」と付け加えて
臥薪嘗胆したそうです。
その後ローマは徹底的にカルタゴを滅ぼします。
勝ったり負けたり逃げたりですが、
準備して急襲して先手を取った側が、相手を圧倒できるようです。
紀元前に大変栄えて、ローマに滅ぼされたこのカルタゴに
「今の日本は似ている」
と指摘する日本の歴史学者がいるそうです。
軍事に力を入れず経済一本のところが似ている、
と警告しているそうです。
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