前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第177回
マフィアの島

「ここがマフィアのボスを裁く裁判官が、
500トン爆弾で警備の人と一緒に車ごと吹っ飛ばされて、
爆死した場所です。」

飛行場から出た途端に、さっそくガイドに脅かされました。
「シシリア島パレルモにて」とQさんが
「楽天家でなければ生きられない」の
まえがきに書かれた町でのことです。
バスはホテルに向かう高速道路に入ったところでした。
なぜ裁判官が殺されたかというと、
イタリアでは裁判官は証拠集めなど、
判決を左右する調査も受け持っているからだそうです。
それまで、マフィアの実態が知られていなかったのは、
マフィアの幹部は捕まっても、誰一人口を開かなかったからです。
それが急に知られるようになったのは、
南米で捕まった1人のボスが、
初めて口を割ったからなのだそうです。

バスの窓から見るシシリアの田舎の風景に息を呑みました。
いつまでも目が離せない程美しいのです。
畑の中に点在する、
見捨てられたような小さな古い古い石の建物にも、
ジンと胸に迫ってくるものがありました。
人口も昔の全盛期より減って、遺跡の方があり余っているようです。
色々な作曲家が「シシリア風」という小品を書いていますが、
妻はこうして旅をすると「成る程分る気がする」と言います。
映画によく出てくる絶壁と海の景色も美しいですが、
このようにシシリアの人には何でもない景色の中に風情があります。

シシリアと言えば、
まずマフィアを思い浮かべる人が多いでしょうが、
彼らの(兎追いし)古里はこんなに美しい土地なのです。
映画「ニュー・パラダイス・シネマ」での1場面で、
事故で目の見えなくなった老人が、
イタリア本土に旅立つ青年に言います。
「決してこの町に帰ってくるな」と。
語る言葉の裏に隠した、
同じ町の住民の同胞愛の強さを感じさせる場面です。
シシリアの人はアラブ系の血をひく人が多いのですが、
性格もイタリア本土の人と違うようです。
知らない人とは、あまりお喋りはしないのです。
手話が発達していて、
指1本を口に当てると「シーッ。静かにろ」ですが、
2本だと「喋るとお前の喉を掻き切るぞ」だそうです。
元々そういう気風だったのが、
フランスに占領されて、絞られて、
ますます自分達だけで固まるようになったそうです。
その後から地域集団としての結束が育ち、
その一部がマフィアになったそうです。


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2005年3月21日(月)

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