第123回
怒り狂うママ
デンマーク語で育った子供は感覚が半ばデンマーク人になります。
昔、妻の同僚だった日本人女性が言いました。
「もう嫌なのよね」
デンマーク男性と結婚して子供も生まれて、
すっかり順調にいっているように見える家庭にも
波風が立っているのです。
さっぱり言うことを聞かない子供に業を煮やして叱ると、
子供は理屈を言って抵抗するのです。
そこは抵抗期にある子供で国籍は無いでしょうが、
子供の使う慣用句が母親には聞き慣れないものだと誤解します。
母が、叱るというよりも怒ってどなりつけると、
ティーンエイジャーにもなっていない娘は
理論的に口答えするのです。
あげくに、叱り付けられている当人の我が子に、
デンマーク語で「ママ、まあ落ち着いて」と言われて
益々カッと怒り狂ったそうです。
目上の者が目下に対するような、
大人が癇癪をおこした子供をなだめるような態度に見えたのです。
その態度と言葉にビックリあきれて傷ついてしまうのですね。
私達が
「相手に“まあ落ち着いて”と言うのは、
誰でも言う普通のことですよ」
と、言ってもショックは消えないようでした。
“問題点を論議する時はその内容の是非が問題であって、
親子も老若も関係ない”
これはデンマーク人の常識であり、建前でもあります。
でも、そこのところで
“外人になってしまった娘に断絶を感じる”
ということらしいのです。
と、言っても元々娘さんは半分は日本人ではないし、
周りも皆デンマーク人だし、
デンマーク語で暮らしているのですが・・・。
言い回しが知られていなくて得することもあります。
アメリカ人と結婚した日本女性の本で読んだ話です。
日本でアメリカの黒人兵と交際していた作者が、
相手の言い回しに“インテリやなあ!”と尊敬して
結婚したそうです。
ところがアメリカに渡って見ると、
それが誰でも使う常套の言い方と分かって
“そうだったのか!”と思いました。
幸いそれで“相手が嫌になった”というような話ではなくて、
明るく現実を生きていく作者なのでありました。
常套句で男性は得をしたのでありました。
とはいえ、頻繁に使うその国の言葉に、
その国民の特徴が出てくるのです。
例えば日本語の特徴のひとつ、
主体性を出来るだけ消し去る話し方は、
外国語を覚えるには邪魔になっていると思います。
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