前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第115回
カブトムシのクリスマス

日本からやって来た人が街を見て
「随分古い車が走ってるなあ」とあきれます。
古い理由はデンマークで車を購入する時には、
200%の税金が掛かっていて高いからです。
よその国で二百万円の車が六百万円では
簡単に新車も買えません。
だから古くなってもあちこち修理しながら乗るのです。
7、8年前までは持ち主が変わらない限り車検も無かったのです。
今は新車から5年以上たった車は
2年毎の車検が義務になりました。

大分昔になりますが、従兄弟がデンマークにやって来たので、
車を買ってヨーロッパを回ったことがありました。
デンマークで私が買うと高いので、
ドイツのハンブルクまで行って
旅行者の従兄弟の名義で買うことにしました。
するとどこにも税金を払わずに半年間乗り回せたのでした。

町外れの中古屋にはたくさんの車が並んでいました。
私達は車をホテル替わりにすいるつもりだったので、
横になって眠れる大きさの車が欲しかったのです。
しかし丁度よさそうな車の値段を見たら、
どれもこれもとても高くて手がでないのです。
フォルクス・ワーゲンに比べて20%ぐらい長くなっただけで
何故値段が何倍にもなるのか納得できませんでした。
それらの大型車には
鼻先に2つとか4つとかの輪が付いていました。
今から考えるとアウディとBMWだったので
高いのは当然なのです。
私はベンツの高いのは知っていましたが、
その他の車はそれまで知りませんでした。
古いフォルクス・ワーゲンと比べて
「高い高い」と店の人に文句を言っていました。
お店の人も困ったでしょう。
結局不満ながら、多分誰が見ても粗大ゴミのように見える、
17年物のVWのビートルを、只のように安い値段で買いました。
これがエンジンを取り替えると、
オイルチェンジを始め何の整備もしないのに、
どこまでもどこまでも走るのでした。

クリスマスの前夜に、
コペンハーゲン方面のフェリーに乗るために
そのビートルで港に向かって走っていました。
人っ子1人いなくなった夕べの町は灯がともり、
吹雪いていました。
どのお店も開いていないし、行きかう車は1台もありません。
サラサラな粉雪の降り積もるフェリー乗り場に着くと、
本日の最終フェリーはとっくの昔に就航していました。
クリスマス・イブはほとんどの公共の乗り物が止まるのでした。
しかたなく、従兄弟と二人で白い息を吐きながら、
車の中でトランプをして明かしました。
点数を書く紙が足りなかったので、
車の天井を点数で書きつぶして真っ黒にしました。


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2004年12月24日(金)

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