第114回
日本女性はお金がかからない
空から見ると、砂漠に落ちた糸のようなナイルがあります。
そして、その川の両岸にへばりついた
エジプトの住民の生息地があります。
線のようなナイルはデルタまで下ると、
初めて面を潤して豊かに流れます。
私達がカイロの川岸のレストランで、
ハイビスカスのお茶を飲みながら美しい流れを眺めていると、
プカプカと何か流れてきました。
最初は無粋なゴミかと思ったらホテイアオイです。
その青い水草は、清らかな上流から株別れして、
ちぎれて流されてきたのでした。
産業の発展にはなるほど益と害の両面がありますが、
川を汚すほどの産業も貧しいエジプトには無いのでした。
カイロには有名なクフ王のピラミッドもありした。
この広大な不毛の土地の片隅では、
そのピラミッドも人の作り出した物の、
その“小ささ”を私に感じさせるのでした。
エジプトの観光地、ルクソールでは私達が日本人だと知ると、
土地の若者は一種独特な笑いを浮かべました。
エジプトのガイドの若者との会話です。
ガイド君はニコニコと笑いながら
「私は日本人の女性と結婚したい。なぜなら私はお金がないから」
そして顔を曇らせて
「エジプトの女性をお嫁にもらうには莫大なお金がかかる。
普通の若者にはそんなお金はつくれない」
そのかわりお金持を払える人は4人までもお嫁さんをもらえます。
デンマークのテレビで回教徒の男性は言いました。
「デンマークの女なんて5円の価値!もしかしたら10円か」
勿論、不信心者の女性の価値を言ったもので、
お金を払わなくてもよいという意味ではありませんが、
私はこの言葉を思い出しました。
私達が引っ越したばかりの頃に隣の家に女の子が生まれました。
何の屈託も偏見もなく育った娘さんは、
幼稚園からの親友に回教徒の女の子がいました。
18歳になった親友は、アラブの国から直接お婿さんを迎えました。
そしてその夫となった男は、
隣の娘さんと付き合うのを禁止しました。
「売春婦と付き合ってはいけない」と、言ったそうです。
日本女性は、言わば5円の価値10円の価値さえ無くて無料進呈。
それどころか実家からお金を送ってくることさえあるのです。
それで「日本人」と聞くと、
一種独特のニヤッと笑う表情を浮かべたのかと思いました。
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