前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第97回
目には目を、嘘には何を?

ガンビアのガイドと押し問答していると、
痩せてはいるが貫禄の有る立派な老人が現れました。
擦り切れたケープを肩に掛けてはいますが、
今にもそれがバラバラになりそうで、
縦糸だけが残って肌は直接太陽に焼かれています。

人々がサッと道を空けると、
欠けた前歯の見える口を開いて自称ガイドと話を始めました。
そして私達三人に「ついて来い」と、手で合図をしました。
歩き始めると、皆さんぞろぞろと付いて来ます。
「これは面白い事になった」と、
私は妻に囁きましたが返事がありません。
緊張しているようです。
老人はいくつか並んだ小さな小屋の、
ひとつひとつの前で立ち止まって中を覗きました。
目当ての人が居なかったのか、次々と小屋を覗きます。
そして最後に大きな剥き身の山刀を見つけて、
それを手にぶら下げてドンドン歩いていきます。
それを見て私も緊張しながら、
妻に「あれをポトンと落として倒れた方が悪い、
なんて言うんじゃないだろうな」と冗談を言いましたが、
妻は“目には目を、歯に歯を”を一瞬思い出し
“村の長老の判断で悪い方の手をチョン切るのではないか”
とドッと冷や汗が出てきたそうです。
何で“目には目”で手を切られるのかさっぱり分かりませんが。
自称ガイドは
「ここで金をくれないともっと金の掛かることになる」とか
「金をくれてお終にしよう」とか、
不安そうな顔で私にささやきます

私達は村の中心らしいバオバブの木に囲まれた建物に着きました。
入るとガランとした部屋の向こう側に、
古い椅子が三つ綺麗に並んでいます。
なぜかカフカの「審判」が思い浮かんでくる
シュールな雰囲気です。
長老らしい別の老人達が3人現れてその椅子に座りました。
自称ガイドが長老達に経過を説明しているらしいのですが、
私達には何を言っているか分からないので不安です。

そこへ英語の分かる若者がやって来て、
私達の言い分を聞いて通訳してくれました。
集まった人達は長いことワイワイとやっていましたが、
長老が「ポリスに行くのが良ろしい」と結論をだしたようです。
そこでボロボロのタクシーに
通訳を入れた4人で乗り込みました。


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2004年11月30日(火)

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