第96回
私をハッピーにしてよ観光
観光はガンビアの最大の産業なので、
出会うあらゆる人が
観光客と取引しようとか騙そうとか待ち構えている感じなのです。
明日はデンマークに帰るという日は、
団体のサファリなどから離れて
自分達で近くを歩いてみようとしました。
地図も無いので
海岸から村に向かいそうな道を選ぶことにしました。
「これが良さそうだ」いう道を選んで歩いて行こうとすると、
砂浜の向こうから声をかけながら必死に走ってくる男がいます。
無視もできないので立ち止まり、
やって来た男に何か用か尋ねると
「どこに行くのか」尋ね返すので
「村を見るのだけれど、自分達だけで行きます」と答えました。
すると銀色の腕輪を光らせた腕で胸を叩いて
「私はガイドだ」と言い出します。
「あのね、今言った通り、私達はガイドはいりません。
ほんの少しここを登って、すぐ帰ってくるのです。じゃあね」
と、言って行こうとすると男は怒り出しました。
「ここはガンビアだ。
土地の者が好意で友情を深めようというのに断るとはなんだ」
と言うのです。
そう言われても、
今まで通り最後には「金を呉れ」いうことだと疑ってはいます。
でも、そこまで言われては本当だったら悪いので
「では一緒に行きましょう。でも金は一銭も払わないよ」と、
失礼ながらまた二度まで繰り返しました。
坂を上るとモダンな超安普請の家が並んでいます。
そこを抜けるともう少し貧しいバラック街にました。
子供達が我々を見つけて珍しがって笑いながら寄ってきて、
我々の手をちょっと触ってから走り抜けていきます。
すると男は嫌な顔をして子供達を追い払いました。
その感じが悪かったので
「もういいからここで帰ります。ありがとう」
と踵を返そうとしました。
すると男は下を向き
「俺をハッピーにしてくれ」と言い出しました。
こちらも惚けて
「どうしたらあんたはハッピーになれるのですか?」と聞くと
勿論お金が欲しいのです。
「お金は払わないよ」と言って帰ろうとすると道を塞ぐのです。
当人を避けて何度かその横をすり抜けようとすると
「くれないとハードなことになるぜよ」と言って
私の鞄のベルトを掴み、金属の腕輪を手に握って脅かしました。
「違う違う。海岸で約束したでしょう。お金ではないって」
押し問答がなんと15分も続くと、
村の女の人達が何事かと集まってきて
ぐるりと我々を囲みました。
その顔がどれも私達に対して親しげでないのが気持ち悪いです。
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