前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第84回
壊れていても大丈夫

日本の消費者は中古でも品質に厳しいのですが、
デンマークでは機能さえ正常なら
傷などをあまり気にしないのです。
私はそこに目をつけて、日本の傷物の中古なら
割安で仕入れてデンマーク出売ることが出来ないか、
と考えました。
そこで東京で写真屋に勤めるSさんに、
中古カメラを卸しているK商事を教えてもらいました。

電話で連絡して、私には難しすぎる複雑な道を迷いながら
やっとのことでたどり着きました。
しかし電話で応対してくれた若い店員は、
中古カメラの卸について商談しようとしても
取り合ってくれません。
私はどうしても軽くあしらわれやすい見かけと性質なのです。
「とにかく来てくれ」ということで、
遠くからやってきたのにがっかりです。
電話で告げたときに何か言ってくれれば覚悟はしたのですが。

そこへ中年の男の人が出てくると、
店員の態度が少し改まりました。
会社の持ち主の社長の登場でした。
社長は私の話を聞いて
「私も初めの頃は一人で香港に買出しに行って、
鞄にカメラを詰め込んで帰ったもんです」
と話してくれました。
私は「日本の店には卸せないようなカメラを」と言いました。
すると社長さんは若い社員を指示して、
カメラがたくさん詰まったダンボール箱を
いくつか運んできました。
そして
「使えるのがあったら幾つでもいいから選んでください」と言って
奥に引っ込みました。

火事跡のような煙の臭いのこびりついたカメラや、
シャッターの下りないカメラがありましたが、
それでも充分ありがたかったです。
修理屋のブーニンが直してくれるはずだったので、
多少は故障していても見掛けがまあまあの物を選びました。
(しかし彼は時々修理するはずのカメラを壊しましたが)
買って帰った中古カメラはゆっくりとですが売れました。
仕入れの値段もまあまあだったので、
この卸し屋さんから後で数回カメラを買いました。
デンマークで友人になった人がその時東京に住んでいたので、
中古カメラを趣味で集めている彼に
選んで送ってもらったのでした。
中古のカメラを窓に飾ると、
カメラを売りたい人もやってきました。
そういう中古でも売ったあとで壊れているのが分かれば、
店が保障もしなければなりません。
そこでデンマークでは
売値の20から35%位で買い取るのが相場でした。
こちらの中古カメラは少しは儲かりました。


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2004年11月11日(木)

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