第83回
お金が無いのに無駄使い
親切なロシア人のスチュワーデスのおかげで、
キャビアを買い損なったのですが、
同じような事が今までに何度もありました。
妻は、安くて美味しいというので、
肉の付いた骨ばかり買っていた時期がありました。
こちらの肉屋は肉の捌き方が荒いせいで、
骨の周りに私達の好きな美味しい肉がたくさん残るのです。
そういえば町には、
豚のあばら骨のグリルと
自家製のビールを売り物にするレストランも
あるようになりました。
大きな赤い銅製の醸造機が店のディスプレーになっています。
さて妻がそのいつもの肉屋さんに
いつもの「肉付き骨」ではなくて、
初めてステーキ用の上肉を注文ました。
すると「これは高いから止めなさい」と、
自分の商売を離れて忠告してくれました。
(牛肉は日本人が見ると随分安いんですよ!)
そこで“せっかく親切に言ってくれたから”と、いうので
久しぶりに食べたかったステーキを諦めたこともありました。
高い物を買おうとしても、どうしても私達2人は
「お金が無い(のに無駄使いする)人」に見えたようです。
いつだったか北ドイツのある駅に着いて
“さて今夜の宿を探そう”としていると、
黒い衣装の魔法使いのようなおばあさんが現れました。
ドイツ語で何か言っているので、
聞いてみるとホテルの客引きらしいのでした。
手振りを交えて「すぐ近く」と言っているらしいので、
面白いので二人で付いていくことにしました。
少し片足を引きずっているので、
おばあさんの言う通りホテルはすぐ近くだろうと思ったのです。
ところが歩けども歩けどもなかなか着かないのです。
おばあさんに「まだかいな?」と通じない英語で話しかけると、
おばあさんはうなずいてニコニコして胸をたたきます。
そういうことを二、三回繰り返して、
こちらの足も疲れた頃に
ある古びたアパートの前で立ち止まりました。
そこが私達が連れてこられた安いペンションでした。
無口で愛想のない大きなおばさんが出てきて、
清潔な部屋に案内してくれました。
翌朝は朝食に各種のハムやさまざまな黒パンが
山のように出ました。
無口だけれど優しかったおばさんは、
昼食用に黒パンでお弁当を作っていけ、と
愛想のない顔で何度も勧めました。
そして四人分ぐらいのサンドイッチを持たせてくれました。
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