前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第63回
チュン君かく語りき

チュンから仕事の合間にカンボジアの事を聞きました。
「国連の兵隊がやって来た時は良かった。
なぜ?物がたくさん売れたから」
(地雷撤去とか治安の安定とかの貢献が“よかった”と
先に来るかと思いました)
「でも、国連のブルガリアの兵隊は目茶苦茶するし、
性病を撒き散らした」
(国連の兵士の質が悪くて困るという話は、
例えばこういうことを指すのですね)
「どうして日本はカンボジアを助けるのか解らない。
まったくお金にならないのに。お金になるならよろしいが」
(どちらも儲かる話でないと信じられないようで、
寂しい気がしました)
「街中の住居は値段がとても高い。
だけど町の外の安い土地を買っても危険で住めない」

私には意外な展開で話が続きました。
私はチュンに
「それなら飛行場と町の間の土地か、
近くの集落の土地を買っておけばいいよ。
今は危険だからただみたいに安いだろうけど、
そのうち落ち着いたら土地が値上がりするから今が買い時だよ」
と、入れ知恵しましたが、
チュンはピンとこなかったようです。

難民キャンプから一緒に逃げてきた4人の仲間のうちの、
一人だけがそれを実行して、現在大きく財産を増やしています。
近くの村に自分が帰国した時のために家を建てて、
その村にいた義理の父母に住んでもらっているのです。
その彼はデンマークでは時計屋の店をもって修理をしています。
時計修理とはジリ貧になりそうな仕事ですが、
コペンハーゲンには年代物の時計がまだまだ動いているのです。
特にボーンホルム島で作られる、
人の背丈程もある時計がたくさん残っています。
「学校から40台修理を頼まれた」とか嬉しそうに言っています。
お店は年をとって引退したお爺さんから、
150万円という破格な値段で道具も在庫も顧客も受け継ぎました。
お爺さんは無償で配達を手伝ってくれます。

チュンは目先の経済観念はあっても
未来を読めないタイプかも知れません。
「このデンマークの税制では住居は買わないと損」
と、私が言い続けてきました。
でも、7年以上続いた値上がりが収まって、
もしかしたら下がることもありえるこの時期に、
家を買って来月引っ越すそうです。
「誰と誰があの時マンションを買ってあれだけ儲けた」から
今から買うのだそうです。
多分買わないよりはましですが、タイミングが悪いです。


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2004年10月13日(水)

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