イラストレーター・小泉鉄造さんが
明かしてくれる、株式投資の虎の巻

第562回
今後の元の変動幅

中国経済が拡大してきたのは
自国の安価な製品を海外に輸出し
利益を大きく伸ばしてきたからで、
特にアメリカとの貿易では大きな黒字となっています。
2004年の対中貿易赤字は1600億ドル(日本円で約17.6兆円)になり
アメリカの赤字の四分の一が中国が占めるようになりました。
2005年にはいっても赤字幅は拡大傾向になっています。

このためアメリカ政府は中国に対して
実質的な中国の通貨元が適正価格より低くなっているとして
元の切り上げを求めていました。
もしこの先も受け入れられないようであれば
アメリカは今後は多くの中国製品に関税をかけ
制裁を行うといってきていました。
今後は中国の元が切り上がっていくことを予想し
短期資金が中国に流れ込んできたために
中国政府は人民元の上昇を食い止めるためにドル買い、
元売り介入を行ってきています。
このために中国の外貨準備高は
7000億ドル(約77兆円)になってきていました。
その額は今年に入ってさらに伸びてきています。
また、中国の通貨供給量が膨らんだ結果
不動産関連などバブルのようになってきていました。
ですので中国側としてもバブルを防ぐ手段としても
元の切り上げ時期を見定めていくタイミング時期がきていたことは
確かでした。
後はどのような方法で切り上げるのか、
いつ切り上げるのかが焦点になってきていました。

では中国は今後の元の切り上げ幅を拡大していくのでしょうか。
それとも拡大していかないのでしょうか。

人民元レートの変動幅は
1日の売買の中間レートから上下0.3%以内で動いていきます。
ですので毎日元が0.3%ずつ上昇していったとしたなら
約3ヶ月で20%切り上がった水準まで上がっていく計算になります。
では実際にこのようなことになるでしょうか。
まずこのようなことになることは考えられません。

中国は元高にしていく前に
解決しておかなければならない問題が山積しています。
中国の銀行は不良債権を多く抱えているために
金融システムではまだ改革途上です。
中国は年内に中国四大銀行の何社かを上場させ
ある程度安定させた後に元の切り上げを行いたかったはずです。
中国政府は銀行の改革をある程度目鼻がついた時点で
元の切り上げを行っていければ一番よかったのでしょう。
ですが、アメリカはそれを待ってはくれず
元の切り上げを求めてきました。
また、対中政策でも
中国製品の一部の繊維製品に関して
緊急輸入制限(セーフガード)を行ってきており
今後も多くの製品に制限が加えられれば
中国とアメリカとの関係が悪化していく可能性もでてきます。
アメリカとの関係を維持しながら
貿易に対しての影響でも
中国企業が大きなダメージを受けないような
輸出入関係を保っていくことが中国側でも必要です。

<次回に続く>



当ページは、投資勧誘を目的として作成されたものではありません。
あくまで情報提供を目的としたものであり、一部主観及び意見が含まれている場合もあります。
個別銘柄にかかる最終的な投資判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。


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2005年8月2日(火)

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