第69回
シーズン料金への疑問
そもそも湯治場としての温泉地には、
ハイシーズンもオフシーズンもないのですが、
いつからか季節によって料金の異なる温泉旅館が多くなりました。
俗に言う“稼ぎ時”に宿泊料金が高くなるシステムのことです。
温泉好きの人たちは、ゆっくりと温泉に入りたいという理由から、
週末や休日は避けて、平日を利用するという人が多いようです。
私は職業柄、取材で温泉地や温泉宿を訪ねますが、
やはり先方が忙しい“稼ぎ時”をはずして、
平日におじゃまするのがほとんどです。
ところが一般の人(サラリーマン)は、
余儀なく休みの取れる週末やゴールデンウィーク、
正月、盆休みに温泉地へ行くことになります。
この時期は、どこの観光地も混雑し、宿に着いても人であふれ、
十分なサービスを受けられないのに、
なぜか宿泊料金が高く設定されています。
「どこも稼ぎ時だから仕方ないよ」と、
当然のようにあきらめている人がほとんどのようですが、
私はそうは思えません。
平日と休日の料金設定は、逆のような気がするのです。
なぜ、休日前やハイシーズンと言われる期間は、
料金が高くなるのでしょうか?
「週末や休日を高くしているのではなく、
客の少ない平日を安くしている分、
忙しい時期で調節しているのです」と言った主人がいましたが、
どうもこの答えには納得がいきません。
では、この宿の平日料金が極端に安いのかといえば、
そんなことはありませんでした。
黙っていても客がやってくる週末や休日に
料金設定の基準を置くか
もしくは平日より安くするべきです。
なぜならハイシーズンは館内が混雑し、風呂の湯も汚れ、
食事も手間をかけられなくなり、サービスが行き届かないからです。
これでは、ゆっくりと過ごせ、新鮮できれいな湯に入れ、
十分なサービスを受けられる平日との差があり過ぎます。
私が知っている湯守(ゆもり)のいる宿は、
季節や時期によって宿泊料金を変えるところはありません。
それは季節や時期に関係なく、
供給される新鮮な温泉の湯量に見合った
宿泊人数しか受け入れないからです。
これならば平日の客と休日の客に、
サービスや料金の差が生じることはありません。
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