第34回
仕上げ湯と合わせ湯
泉質の異なる2つ以上の温泉に入ることを
「合わせ湯」といいます。
代表的な合わせ湯が、昔から群馬県にはあります。
それは、草津の「仕上げ湯」と呼ばれています。
みなさんも良くご存知の草津温泉は、
自然湧出量が約3万4000リットルと
日本一を誇る群馬の名湯です。
草津温泉の凄さは、湯量だけではありません。
優れた泉質こそが、全国から人々を引きつけてきました。
pH2という強酸性であるため、
強力な殺菌力が皮膚病に特効があり、
古くから湯治場として栄えてきました。
その酸性度は、ほぼ胃液と同じ。
五寸釘が10日で針金のようになってしまうといいます。
当然、大腸菌やレジオネラ菌は死滅してしまいますから、
消毒剤を投入する必要もありません。
それゆえ浴客は、よく皮膚のただれを起こしました。
このただれを治し、肌を整えるために、
昔から草津温泉の帰りに立ち寄った温泉があります。
これを草津の「仕上げ湯」や「なおし湯」、
「あがり湯」「ながし湯」などといいます。
酸性の強い草津の湯で荒れた肌のアフターケアとして、
弱アルカリ性の肌にやさしい温泉が好まれました。
JR吾妻線沿いの沢渡(さわたり)温泉や四万(しま)温泉、
川原湯温泉が代表的な草津の仕上げ湯です。
草津温泉の強い泉質でケガや病気を治し、
仕上げ湯で肌を整えてから帰る。
2つ以上の湯を合わせることにより、
健康と美容を維持した先人たちの知恵の賜物といえます。
万能な温泉なんてありません。
いくつかの温泉を合わせることで
湯治効果を高める「合わせ湯」を、
現代人も実践してみてはいかがでしょうか。
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