温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第19
なぜ温泉に入らない?

私は新聞や雑誌の連載、
著書も含めて、すべての記事に
私自身が温泉に入っている写真
を掲載しています。
「オジサンの裸なんか見たくないよ。
なんで女性のモデルを使わないの?」
という声も聞こえるのですが、
長年、このスタイルで取材を続けています。

それは、なぜか?
一番の理由は、取材経費の節約なのですが、
もう1つの理由は、「臨場感」です。
記事を書いている筆者自身が温泉に入っているという、
文章と写真のドキュメント性を高めたいからです。
だから常に、カメラマンと組んで取材に出かけます。

最近は、カメラマンと2人で取材を受けること自体に、
驚かれる旅館もあります。
たいがいは、記者が1人でやって来て、
ライターとカメラマンを兼ねて取材をしていくようです。

「まだ来てくれるのはマシなほうです。
電話で取材を受けて、旅館の外観と風呂の写真は
メールで送ってくれ、というのがザラですよ」
という話をよく聞きます。
この不景気な、ご時世です。
どこの雑誌社も、ライターとカメラマンを
取材に送り込む余裕がないのでしょう。
私も長年、雑誌の編集をやってましたから、
事情はよく分かります。
でも、それでは読者に真の情報は伝わりません。
旅館側が発信する、都合のいい情報に限られてしまいます。

現在、私は朝日新聞の群馬版に
『湯守(ゆもり)の女房』というエッセーを連載しています。
先日、偶然にも他の新聞に、私が取材した同じ温泉宿が、
同時期に掲載されたことがありました。
当然、朝日新聞の記事では、温泉に入った裸の私が写っています。
一方、他紙の記事は、旅館の外観と料理と
無人の露天風呂が写っているだけでした。
記事の内容も、宿の歴史と料理と主人のコメントを
載せているだけで、一切、温泉には触れていません。

温泉の記事を書くのに、なぜ温泉に入らないのでしょうか?

「そうなんですよ。取材に来て、話だけ聞いて、
温泉に入らないで帰ってしまいました」
と、ご主人も残念そうでした。
だってそこは、何よりも源泉かけ流しの風呂が
自慢の宿なのですから。

温泉へ行って、温泉に入らないとは、
なんて、もったいない話でしょうか。
寿司屋へ行って、
寿司を食べずに帰ってしまうようなものです。

温泉を取材する記者のみなさん、
温泉に行ったら必ず温泉に入りましょうね。
読者をあなどっては、いけませんぞ!


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2012年2月1日(水)

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