やめなければならないと思っても、従来の行きがかりがあるし、社会的な名誉に傷がつく心配もあるし、やめたあと何をしてよいかわからないという不安もある。そこでどうにもならないところまで追い詰められないと手をあげない人が多いが、私の場合に限ってそういうときはいたって思い切りがよいのである。
砂利屋の経営は出鼻を挫かれてしまったが、私はすぐに立て直しを考えた。関西工機に管財人が入り、管財人が債権の取り立てにきた。私はこれまでの事情を話し、欲しければプラントをはずして持って帰ってもよいと言った。屑鉄にしかならない物を管財人が欲しがるはずもなかった。
交渉の末、私は出資金と債権をあわせて百六十万円で買い取った。債務さえなければ、何とかやっていける状態になっていた。ただ仕事がまだ完全に軌道に乗らず、ショベルローダーもブルドーザーも遊ぶ時間が多いので、ヒマな時間を利用してやれる商売はないかと考えた。宇都宮市の周辺を往復していると、国道4号沿いに道路より低い田圃がたくさんあった。そういう田圃は値段も安かった。それを千四百坪ばかり買ってトラックや機械の置き場にするという名目で申請をしたら、農地からの地目変更が許可になったので、空いた時間を利用して埋め立てをすることにした。 |