社長が大乱脈経営
まず社長になった奴が、他にも同じ話を持っていって、権利の二重売りをしたので、プラントをつくってみたら、同時に二つできてしまった。自分は一文も出資していないのに、情婦まで連れてきて月給は二人分もらうし、その情婦が社長の女房気取りで仕事に盛んに口をはさむ。また会社のお金を、無断で自分の旧負債の返済に流用する。とうとう監督官庁から機械の運転をさしとめられてしまった。
びっくりした私は栃木県の知事さんのところまでかけあいに行って、やっと操業を許可してもらったが、実際に機械を動かしてみると、また別の困難にぶつかった。
佐藤工業では社長が東京支店長に命令して製品を買ってくれる約束をしたが、地元の出張所長のところへ行くと、言を左右にしてどうしても砂利を買ってくれなかった。あとでわかったことだが、この業界ではリベートが常識になっており、社長からきた取引先では、あからさまにリベートの要求もできず、こういう場合は□実を設けて断るに限ると判断されたらしいのである。
おかげで製品ができても売る先が見つからない。手形はそういう事情とは無関係の期日が到来するので、その度に私は株を売って手形をおとさなければならなかった。この調子で手形の支払いが続くと、私がせっかく兜町で稼いだお金を、鬼怒川の中に全部ぶち込んでしまいかねない。次の月もまた次の月も私は手形をおとしていったが、私の立て替え金が千五百万円に達したとき、とうとう私は関西工機に文句を言った。 |
