スピーチの終わったあと、私が片手にウイスキーのグラスを持って西武の広岡監督とお喋りをしていると、TBSのカメラマンが同じパーティに出席していたうちの長男にマイクを向けて、
「息子さんとして、オヤジさんをどうごらんになっていますか」
ときいた。うちの息子は少しもわるびれずに、
「まあ、僕ら子供から見たら、失敗の連続ですね」
「へーえ。邱センセイでも失敗することがあるのですか?」
「あるどころか、十のうち成功しているのは一つくらいじゃないですか。世間はその一つだけ見て、九つの失敗のほうを見ようとしないのですよ」
「本当ですか。とてもそういう具合には見えませんけれどね」
とアナウンサーは信じがたいような表情をしたが、あとで息子の受け答えをきいて私は笑いころげてしまった。私はよく失敗をするし、失敗することをおそれない。私が失敗をおそれないのは、「成功とは失敗を栄養として大きく伸びる樹木のようなものだ」と考えているからである。
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