第299回
「内縁の妻」
以前、病院の院長の「内縁の妻」が、
東大卒の医師と偽って
無資格で診療行為をしていたとして
医師法違反(無資格診療)の罪に問われ、
院長ともども逮捕された事件がありました。
そのときの報道によれば、
彼女は病院の開業当時から
ずっと内科の診療部門を担当しており、
10年間以上も
約20人の同僚医師や看護師たちは、
彼女が偽医師であることに
まったく気づかなかったそうです。
人手が足りなかったから
院長が内縁の妻にやらせていたのか、
彼女自身の要望でやっていたのか、
そのへんの事情は不明ですが、
現在の複雑な医療の仕組みの中で、
10年以上も
医者として勤めさせていたとは
考えてみれば非常に物騒な話です。
また、大体の場合において、
偽医者になりすますほうの人間が
ある程度の経験を積んだ
医療関係者だという話はよく聞きましたが、
今回のように、騙される側に
医療関係者が何人も含まれていたケースは
いままであまり聞いたことがありません。
いくら手術や専門的処置が必要でない
内科とはいえ、10年以上も
プロの連中を欺き続けるのは至難の業で、
極端なことを言わせてもらえれば、
夫の指導がよほど上手だったのか、
周囲がよほど鈍かったのか、どちらかでしょう。
※ちなみに、彼女への患者さんの評判は
「やさしくて、名医」だったそうです。
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