虎ノ門漢方堂店主・城戸克治さんの
やさしい漢方の話

第288回
夜中に、何度もトイレに行く理由

精神科の病院に入院中に
長時間の身体的拘束を受けた患者が、
拘束中や解放直後に
肺塞栓(はいそくせん)症で
突然死亡するケースが
このところ東京近辺で多発しており、
長時間身体を動かさないことが
発症の引き金となる
エコノミークラス症候群が
その原因ではないかと疑われています。

一般に、入院患者の
肺塞栓症の予防や対策は
外科や整形外科の手術の場合が
主に対象になっており、
精神科など
手術をほとんど行なうことのない
他の診療科目では、
特別な対策は何も取られていないようです。

解剖を担当した慶応大学医学部の
監察医の方が、
「拘束が引き金になった疑いもある。
 身体を動かさないことの危険性が
 もっと認識されるべきだ」
と少し憤慨気味に語っておられましたが、
確かにその通りだと私も思います。

また、このことを
もう少し別の角度から検証すると、
「精神安定剤や睡眠薬などの薬物を飲むと
 睡眠が深くなり過ぎて
 寝返りを打つことが減少してしまい、
 その結果、血栓が出来やすくなる」
という仮説を立てることも可能です。

年を取って老人になると、
夜中に目が覚めて
何度もトイレに行くようになって
お困りの方がたいへん多いのですが、
ひょっとしたら、そのことも
動脈硬化が進行している老人が
睡眠中に血栓症を起こさないようにするための
いわゆる「自然の摂理」なのかもしれません。


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