服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第933回
雨の日の楽しいおしゃれ

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
shigeo kakudou 様から
第926回「折畳傘かパーカーか」の感想および
質問メールをいただきましたので
そのご回答を掲載させていただきます。


■ shigeo kakudou 様にいただいたメール

件名:雨の日のボトムス防水対策

出石先生へ。

「第926回 折畳傘かパーカーか」拝読致しました。
最近のレインウェアはゴルフ用品等に見られるように、
素材のみならずデザイン面でも
かなりおしゃれに充実してきていると思います。
黒やチャコールグレー等、
質感や色合いがスーツに合うものも
最近よく目にするようになりました。

スーツの上にパーカー。
私は小雨のときは折畳傘を使いますが
本降りの雨の際には傘と併用して
そのスタイルを好んで致しております。
上半身に対する雨対策はこれで充分かと思います。

問題はボトムスへの対策であります。
雨の日のスーツスタイルにピッタリの靴を、
以前「第721回 雨にこそ楽しい靴を」にて
御紹介頂きましたので、
靴の防水対策は完璧となりましたが、
ズボンがびしょ濡れになるケースが時々あります。
そこで私はさきのゴルフ用のレインウェアのボトムスを
スーツのズボンの上から履いて雨対策としている次第です。

そこで先生に質問ですが、
この組み合わせはルール違反でしょうか?
あるいはもっとおしゃれで実用的な
ボトムス防水対策があれば御教授をお願い致します。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りをお寄せ下さり、
ありがとうございます。
また、日頃からお目通し下さっていることにも、
重ねて御礼を申上げます。

たしかに雨の日はやっかいなものです。
どんなに完全なレイン・コートがあっても、
必ず死角があったりする。
たとえば足首のあたりは
どうしても濡れてしまう。
しかも足や脚が濡れて冷たくなるのは、
イヤなものです。
登山用としては
完全防水のレイン・パンツなどもあるようですが、
これを街中で穿くというのも抵抗があります。

そうなるとご指摘のように、
通常のスーツの上に雨用ゴルフ・パンツを重ねるのも、
理に叶った方法でしょう。
オフィスに着けば、
上に重ねたパンツを脱げば良いわけです。
雨に濡れることも、折り目が消える心配もありません。

話は変りますが、1920年代に
オクスフォード・バッグスという
極端に幅広のパンツが流行ったことがあります。
あれは大学生が
ゴルフ用ズボンの上に重ね穿きするための
シルエットだったのです。
教室を出て、上のパンツを脱げば
すぐにゴルフが可能だったから。

それはともかく、
トラウザーズを重ねることは
なにも今にはじまったことではなく、
時と場合によっては有効な手段だと思います。
そしてもうひとつの方法は、
オフィスでトラウザーズを穿き替えること。

一例として挙げれば、最近、
防水性を売り物にしたジーンズが登場しています。
一見ふつうのデニムなのですが、
裏にゴアテックスを貼ってある。
このために雨を完全に防ぎ、
しかもムレることがないという新商品なのです。
「エドウィン」なら18,900円で入手できます。

オフィスまでは防水ジーンズで行き、
オフィスでは通常のパンツに穿き替えるわけです。
雨はうっとうしいものですが、
雨の日だからこそ経験できるファッションもあります。
それでファッションの幅が拡がれば、
これまた楽しいことではありませんか。


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