服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第934回
どうしてカウボーイは姿勢が良いのか

ウエスタン・ブーツを履いたことがありますか。
時にカウボーイ・ブーツとも言いますね。
もともとはアメリカ西部の牧童たちが
馬に乗る時に履いたわけですから、
けっして上品なものではありません。

事実、ウエスタン・ブーツ愛好家のなかには
絶対に磨かないという人もいます。
ウエスタン・ブーツだけは
自然に汚れているのが味わいである、
というのでしょう。
私も永い間ウエスタン・ブーツを履いています。
ただし、ふつうの靴と同じように手入れをしますよ。
脱いだ後にはちゃんと木型も入れたりして。
真夏以外はたいていウエスタン・ブーツ。
どうかするとダーク・スーツに
ウエスタン・ブーツを合わせたりするので、
人からは変な顔をされることもあります。

ウエスタン・ブーツの利点は、
パンツとブーツ(靴)との接続がうまくゆく、
ところでしょう。
足もとがひとつの線で美しく流れてゆく。
これが私にとっては気持がいいのです。
仮にブーツでない時でも、
パンツの裾、靴下、靴が美しく一体化するように
心掛けるべきです。

そしてもうひとつの利点は、
姿勢が良くなることです。
たいていは踵(かかと)が高くなっているので、
どうしても背筋が伸びる。
腰が上り、背骨が一直線になる。
で、結局は美しい姿勢になるというわけです。
もしも実際にはそうでなくとも、
ウエスタン・ブーツを履いた時には、
そのことをはっきりと意識して下さい。
「これは踵が高いんだ、背筋を伸ばし、胸を張るんだ」
と、自分に言い聞かせることです。

ウエスタン・ブーツをひとつのきっかけとして、
ぜひ堂々とした姿勢を手に入れて下さい。
ウエスタン・ブーツで忘れてはならないことは、
ブーツ・ジャック。
これは「ブーツ脱ぎ器」です。
V字形の切込みのある細長い板。
板の一方の端を片足で押さえ、
もう一方の足首を切込み部分にはさんで、ブーツを脱ぐ。
これで簡単に、ブーツを傷つけることなく、
脱ぐことが出来るのです。

それはともかくウエスタン・ブーツが
実は姿勢補正器であることを
くれぐれもお忘れなく。


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