服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第917回
ブランケットで旅する話

秋の旅行計画をなにか立てていますか。
<外に少なく、内に多く>
これが旅上手のコツです。
「外」とはアウター・ウェア、
「内」とはインナー・ウェア。
コートやジャケットはなるべく少なくする。
その代りインナー・ウェアを数多く用意する。

シャツやスェーター、スカーフなどは
上着に較べてかさばらず、
また応用範囲も広いからです。

さて、そうなると旅行用の上着に
なにを選ぶかが、
大きな問題になってきます。
この間、横浜、元町を歩いていて、新しい店を発見。
「ニブリック・バー」(TEL:045-228-1455)。
石津祥介さんプロデュースの店で、
なるほど大人の男が着たいような服が並んでいます。

この「ニブリック・バー」で
ブランケット・ジャケット(53,000円)を見つけました。
それはタータン柄で、
ちょっとブランケットを思わせるような
しっかりとした生地で仕立てられているのです。
色柄やデザインもさることながら、
ジャケットでもあり、
またハーフ・コートのようでもある。
つまりこれ1着あれば、
コートはもう要らないわけです。
時にジャケットのように、
時にハーフ・コートのようにも使える。

タータン柄は正しくはチェックではなく、
“プレイド”と言うのだそうです。
そしてスコットランドのゲール語では
もともと“プレイド”には
「毛布」の意味があります。
大きな1枚の布を身体に巻きつけ、
ヒダを作って装飾にする。
そこからあのスカート状の
“キルト”が生まれたわけです。

毛布こそ最上の旅行着である、
という考え方は比較的最近までありました。
カウボーイたちも野宿の時には
たいてい毛布を使ったものです。
その名残りが「赤ゲット」という言葉。
「今でも赤いブランケットで旅行しているのか」
という半ば驚きを表現した表現なのです。

それはともかく
“ブランケット・ジャケット”は
名前も着こなし方も、面白いなあ、
と思ったことです。


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