第864回
木陰とサキとアイス・ティー
アイス・ティーはお好きですか。
私の夏の飲物はたいていアイス・ティーです。
ごくふつうにうんと濃い紅茶をつくっておいて、
氷の上から一気に注ぐだけのことですから、
簡単そのもの。
私の場合、ミルクを加える。
つまり正確にいえば
アイス・ミルク・ティーですが、
これはもう好みの問題でしょう。
最近では保冷(保温)性のあるマグが
出まわっていますから、
たっぷりと作っておいて、
外に持出すことも可能です。
さて、そこでアイス・ティーを片手に木陰を探そう。
静かな木陰で、風通しの良いところ。
ベンチでもあればいいなあ。
そして右手にはアイス・ティー。
ああ、なんて気持ちの良い風だろう。
この心地良さに一度気がつくと、
冷房が次善の策であることに思い至るでしょう。
一日に一度は冷房をとめて、
アイス・ティーを持って、木陰を探しに行こう。
涼しい木陰で、アイス・ティーを片手に、
10分でも15分でも昼寝ができれば
極楽というものでしょう。
そして睡眠薬には小さな物語、すなわち短編。
さて、どんな短編がふさわしいのか。
これまた好みの問題でしょうが、
たとえばサキ。
あるいはサマセット・モオムもよろしい。
紅茶にはやはり
メイド・イン・イングランドが似合うでしょう。
もしこれがアイス・コーヒーなら、
オ・ヘンリイかアンブロース・ビアス。
アイス・カフェ・オ・レなら
当然モオパッサンでしょう。
サキは正しくは
“サーキ”Sakiと発音するとのことでは、
日本では「サキ」として親しまれています。
本名はヘクター・ヒュウ・マンロウ(1870〜1916年)。
第一次大戦に戦死した軍人でもあります。
つまり20世紀はじめに書かれたものが多いのですが、
なぜか古さを感じさせないのです。
人間の根源的な営みは
それほど変りはしないのでしょう。
とにかく一度目を通してみて下さい。
ハラハラ・ドキドキと読み進んで、
最後の一筋でヒヤリとさせられて
身体が冷えること間違いなしです。
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