服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第834回
美しい女の、美しいマナー

煙草はお好きですか。
これは前にもお話したことですが
私は煙草を喫いません。
禁煙したのではなく、生まれてこの方、
一度も口にしたことがないのです。
でも私は寛容でありたいと願っていますから、
さほど人の喫う煙草は気になりません。
私自身について常にもっとも気になるのは、
「今、自分が美しいかどうか」です。
人に対して、美しくない自分を見せるのは、
失礼であり、恥かしいことだと考えているからです。

極端な話、私が煙草を喫っている姿を、
まったく他人の、煙草を喫わない人が眺めた時、
「ああ、なんと美しい様子だ!」
と感謝してくれるなら、
私は喜んで煙草を喫うでしょう。
美しいか、美しくないか、
それが私の価値基準なのです。

過日、あるレストランに行った時のこと。
かなり大型のそのレストランは、
満員で少し待つことになりました。
結局、しばらくして
喫煙席のテーブルに案内されたのです。
まずは食前酒と前菜、ついで白ワインを飲む。
メイン料理は魚貝類。
私は家内とふたりで食事している。

少し遅れて、私たちの隣の席に
若い男女が座って食事をはじめた。
私がデザートをはじめようという頃、
その若い、ごくふつうの女性が私たちに
「煙草を喫ってもいいですか?」

そこは本来喫煙席で、
煙草を喫って良いテーブルなのです。
にもかかわらず、
彼女はそう言ってから、喫いはじめた。
私はちょっと良い気持になりました。
やがて、なんと美しい女性であるか、
と思うようにもなりました。
つまり「美しい」ということは、
実はそんなことなのかも知れません。
ちょっとした思いやり、
ちょっとした心づかい、
ちょっとしたひと言・・・。

私はこの時、ひとつ教えられました。
自分が勝手に「美しい」と思い込むだけでなく、
相手に対して、
ちょっとしたひと言を
かけてあげられる人間になりたいなあ、
と反省したのです。


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