第796回
小さな幸福のボタン
シャンパンはお好きですか。
もちろん私はこれに目がありません。
第一、いつ、どんな時に開けても
幸福(しあわせ)な気分になれるものは、
そうそうあるものではないでしょう。
正しくは“シャムパーニュ”と言うべきでしょうが、
ここでは習慣に従って
シャンパンとしておきます。
もっともスパークリング・ワインは、
シャンパンに限ったことではありません。
イタリアにスプマンテ、ドイツにゼクト、
スペインにカバがあるといった具合です。
つまりワインが造られる国には
必ず発泡酒があるわけです。
さて、ほとんどすべてのスパークリング・ワインは、
コルクの栓をさらにワイアーで留める。
ガス圧で栓が飛ぶのを防ぐためです。
表面のフォイルをはがすと、
ワイアーと栓とがあらわれる。
そして細い針金がコルクに食込みすぎないように、
小さな、丸い金属片が被せてありますね。
あの丸味をおびた
金属部分の名前は何と呼べはいいのか。
私は知りません。
どなたか博学の方、お教え下さい。
シャンパンを開けるたび、
いつもあの丸い円盤が気になって仕方がない。
もちろん漠然と捨てるのですが、
何かに使えないだろうかと、思い悩む。
そしてやっと私にも名案が浮かびました。
永年のシャンパン研究?の結果であります。
まず第一に、あのごく自然な丸いカーブが美しい。
第二に、表面の色やデザインが面白い。
ことに自分の好きなシャンパンなら、
なおさらのことです。
そこでカフ・リンクス(カフスボタン)が
作れないでしょうか。
金属片だけでは軽すぎるので、
樹脂か鉛か、なにか詰めた後で
固ってくれる材質を入れる。
この時にカフ・リンクスのスプリング部分を
固定させれば良いのではないか。
でも、カフスボタンを一対と考えるなら、
同じ銘柄を2本開けることになってしまうのですが。
シャンパン・ボタンはひとつの例で、
身近かな材料を使って、
自分だけのカフ・リンクスを作るのも
小さな幸福の第一歩なのです。
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