服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第786回
万能選手としてのオフ・ブラック

オフ・ブラックという色を知っていますか。
「黒に近いけれど、黒ではない色」
ということです。
表現としては“オフ・ホワイト”に似ています。
もともとの意味は
「白に近いけれど、白ではない色」。
まずオフ・ホワイトという言い方があり、
それにならって
オフ・ブラックの言葉がはじまったのでしょう。

よく、黒は究極の色である、と言われます。
黒ほどおしゃれな色はない、と。
私も黒が好きです。
迷った時には黒、と人にすすめることもあります。
でも、なにごともそうですが、
過信するのは考えものです。
なにがなんでも黒さえ着ていればおしゃれ、
というわけではありません。

ひとつの例としてあげれば、
ブラック・オン・ブラックの着こなしがあります。
つまり黒いシャツの上に
黒いジャケットを重ねるような場合ですね。
理想を先にいえば、その両者の色を揃えて、
質感を違える組合わせが、
もっとも美しい効果となります。

ひと口に「黒」といっても
その表現はさまざまで、
同じような黒と黒とであっても、
微妙な不協和音となることがあります。
もちろんこれは
かなり上級生のおしゃれとしての話なのですが、
少なくとも黒はそれほど簡単でも
単純ではないのです。
黒を上手に着こなすには、
ある程度の心の準備が必要になってきます。

さて、そこでオフ・ブラック。
たとえば黒に近いほどのダーク・グレイ、
これもオフ・ブラックのひとつでしょう。
あるいは黒に近いほどのダーク・ブルー
ということも考えられます。
黒に近いけれど、黒ではない色。
このような色はむしろ漆黒に較べて、
はるかに着こなしやすいのです。
仮に赤やグリーンといった強い色であろうとも、
優しく包んでくれる。
異和感を生じない色なのです。
もちろん黒ともよく合います。

その意味ではオフ・ブラックは、
イージー・ブラックでもあります。
いずれにしても今一度
オフ・ブラックを見直して、
その応用範囲の広さに
注目しようではありませんか。


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