服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第747回
新カフス・ボタン考

カフス・ボタンはいくつ持っていますか。
私は数えられる位の数しか持っていません。
ひとつにはよくなくしてしまうからです。
それもたいていは片方だけなくしてしまう。
それともうひとつの理由は、
なかなか理想的なカフス・ボタンが見つからないからです。
私が考える理想的なカフス・ボタンとは、
ちょうど鼓(つづみ)のような形。
要するに裏も表もなくて、
そのつもりになれば
どちら側でも表として使えそうな
カフス・ボタンのことなのです。

前に市販のボタン2個と糸とを使って、
自分でカフス・ボタンをつくる話を致しました。
が、それも同じく理想のカフス・ボタンへの
ひとつの方法でしょう。
第一、これなら万一紛失した場合でも
それほどのショックではありません。

今、私が作ってみようと考えているのは、
小さな金属ボタンを使う方法です。
たとえば銀色(ぎんしょく)の小さなボタンがありますね。
とりあえず4個必要になるわけですが、
新たにカフス・ボタンを新調することを思えば安いものです。
この銀色のボタンに、銀色の糸を通してゆくわけです。
上下のボタンの間隔はざと1センチほどでしょうか。
ボタンの表面の糸の通し方は
「ニ」の字よりも「メ」字のほうが美しいと思います。

最初に何本か糸を通し終えたなら、
あとはゆっくりとそれが軸となるように、
何度も何度もしっかり巻きつけてゆく。
上下のボタンが固定されたなら、完成。
世界でたった一対の、
理想的なカフス・ボタンが出来ることでしょう。
もちろん好みによっては
金色(きんしょく)のカフス・ボタンも可能です。

ボタン型のカフス・ボタンの良いところは、
これ見よがしの大げさな感じがないことです。
シンプルで、実にさりげない。
そのために応用範囲が広い。
シャツがダブル・カフスでさえあれば、
ほとんど相手を問わないでしょう。

そうなると、あえてスポーティーな色柄の生地で、
ダブル・カフスのシャツが作ってみたくなる。
たとえばタッタソール柄のシャツとか。
本当におしゃれというものは、
終りがありませんね。


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