服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第703回
メタル・マッチは新しいキイ・ホルダー

いざという時の備えをなにかしていますか。
私自身は極端なほどの楽天家なので、
何もしていません。
ただ漠然と想像をしてみることはあります。
とりあえず人間が生きてゆくには水が必要だろうなあ、
といった具合に。
でも、水を常に持ち歩くことは至難の技ですね。

けれども、
おそらく水の次くらいに必要なはずの火であれば、
いつでも用意しておけるのではないでしょうか。
最近、ちょっとした小物を発見しました。
ジッポーの、と説明しはじめれば、
誰しも「ああ、オイル・ライターね」
と言うでしょう。
たしかにジッポーは
オイル・ライターでよく知られています。
しかし、そうではないのです。
実は、ジッポーのメタル・マッチなのです。

メタル・マッチそのものは
別に新しいものでも、
珍らしいものでもありません。
オイルをしみ込ませた金属棒を、
やはり金属のヤスリで擦って火花をおこし、
これで着火させる。
いとも原始的な仕組みなのです。
が、メタル・マッチの利点は、
あらゆる悪条件のなかでも、
必ず火が点けられることです。
極端な話、
雨のなかで着火させるのも不可能ではありません。
もちろん寒さや風にも強い。

さて、ジッポーのメタル・マッチは
「カークス」という商品名で、
実に小型で、キイ・ホルダーにも最適。
そのくせなんとも大きく、
逞しい火が得られるのです。
加えて小さなポケット・ナイフや
はさみなどの機能も内蔵されています。
私にとっては、小さな、
いざという時の用意であるかも知れません。

着火棒の収納部がオイル・タンクになっていて、
ここに少量のオイルを入れておく。
蓋の部分にゴム・パッキンが入っているので、
オイルの揮発が最小限に抑えられる。
小さいけれど、実によく考えられているのです。
一個、1,417円、
私は「モンベル・クラブ」(TEL 5420-7956)で
買い求めました。

さて、すぐに使えるよう
メタル・マッチの練習をしているところです。
こんなことをしながら、
少しは本気で、
いざという時の準備をしなくてはと
今、考えているのです。


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