服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第702
理想のカバーオールを手に入れよう

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
Y様から
「カバーオール」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ Y 様にいただいたメール

件名:初めてお便りします。

初めまして、出石様。Yと申します。
いつも楽しく読ませて頂いております。
突然の便りで恐縮なのですが、
私は、最近肌寒くなってきて
重ね着ができるこの時期が好きなのですが、
カバーオールタイプの上着で
気に入るものがなくて困っています。
アメカジのようなシンプルで
素材の良い物を探しているのですが、
なかなか見つかりません。
そこで、テーラー等の仕立て屋さんで
作ってくれるものでしょうか、
また、お勧めの素材やシルエットがあれば、
ご教示していただくと嬉しく思います。 
これから寒くなりますが風邪等にはお気をつけ下さいませ。
乱文にて失礼しました。


■出石さんからのA(答え)

お便りを頂きありがとうございます。
また日頃からお目通し下さっていることにつきましても、
御礼を申上げます。

さて、カバーオールを
洋服屋で仕立てさせようというお考えには、
賛成できません。
どう考えてみても無理だと思うからです。

ところでこれはまったくの余談ですが、
「カバーオール」は和製英語です。
“カバーオールズ”、
または“カバーロールズ”coveralls
という英語はたしかにあります。
が、これは「つなぎ」の意味になります。
ワーキング・ウェアによくある
一種のジャンプ・スーツ。
あるいは幼児用の
「おくるみ」を指すこともあります。

けれども今では
「カバーオール」と言って、
日本人同士で意味が通じますから、
これはこれで良いのでしょう。

さて、理想のカバーオールをどうすれば作れるか。
方法がないわけではありません。
スーツとはまったく別に、
カジュアル・ウェア、
またはワーク・ウェアのメーカーが存在します。
ここならたぶん作れるでしょう。
まず自分のイメージに近い一着を購入して、
それをもとに変更個所を具体的に伝える。
もしメーカーの企画室に友人がいれば、
サンプルの一着として
作ってくれる可能性はあります。
でも、メーカーの企画担当者と友達になるほうが
難しいかも知れません。

もしもデニムのような生地で良いのなら、
オーダー・ジーンズの店で
縫ってくれるかも知れません。
けれどもこの場合の問題点は、
型紙をどうするか。
基本的な構造としては
気に入っているカバーオールがあれば、
それをもとにして型紙を作ることはできます。
いずれにしても
多少の投資は必要になってくるでしょう。

私自身が欲しいなあ、と思っているのは
「フィルソン」のハンティング・コート。
まるでブリキのような生地ですが、
永く着ているうちに身体になじんできます。
これも一種のカバーオールでしょう。
でも、こんなふうに
想像のおしゃれを考えているのも楽しいものですよね。


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