服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第636回
千社札ナウ

千社札を知っていますか。
千社詣の折に貼るから、千社札。
全国各地の神社仏閣を願をかけてまわる。
出来ることなら千社もめざしたい、
という千社詣。
ですから実際には千社でなくとも、
千社詣というのです。

千社札の流行は江戸、
安永年間(1772年〜1781年)のことと言いますから、古い。
一説にそれを流行らせたのは江戸の学者、
鳩谷天愚孔平(きゅうこくてんぐこうへい)
だったと伝えられています。
本名を鳩谷信敏と言ったのですが、
ある時愛児を失い、
この供養のために千社詣をはじめたとのこと。
どうせならというので、
自分の住所氏名などを手書き手刷りで用意して、
それぞれの神社に貼ったのだそうです。

けれどもこの千社札、あまりに流行りすぎた。
そのため幕府は天保年間(1830〜1844年)になって、
禁止したほどです。
しかし趣味は止めようがないもので、
千社札の交換会が盛んになったと言います。
一方、禁を破って千社札を貼り、
遠島(えんとう)「島流し」になった者もあったそうです。

千社札通に言わせると、
なるべく貼りにくい所に貼るのが良いのだそうで、
江戸の頃には手拭いに水をふくませて丸め、
その先に千社札をあてがって、投げる。
両国の趣味人、なた万という人は、
巌島神社で8回目に見事命中させたとのことです。
これはもう、ご苦労さまです、
というほかないでしょう。

しかし今の時代に千社詣、千社札というのは、
粋であるのかないのか、よく分りません。
が、心のどこかで自分専用の千社札を作ってみたい、
という気持はあります。
神社仏閣に貼るのは仮に迷惑だとしても、
和ダンスや行灯(もしあったとして)に貼るのは、
人それぞれ勝手かも知れません。

ところが探せばあるもので、
自分用の千社札を作ってくれるところがあります。
銀座「すぎもと」です。
最低、300枚からで25,000円(税込)とのこと。
さて、高いのか安いのか、考えてみて下さい。


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