服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第637回
キイ・ワードはシェイクです

アイス・ティーはお好きですか。
私は朝はたいてい紅茶を飲みます。
そして寒い時には熱い紅茶、
暑い時には冷たい紅茶。
もっともより正確には
ミルク・ティーなのですが。

まずポットに少し多目の紅茶の葉を入れる。
次に熱湯を注いで、しばらく置く。
それから氷を入れたグラスの上から
直接、紅茶を注ぐ。
これが私のアイス・ティーの作り方なのです。
けれどもある日、突然ひらめいた。
紅茶とミルクをもっとよく混ぜると
美味しいのではないか。
それで試してみました。

同じ手順で紅茶をつくる。
ただしシェイカーに氷を入れておいて、
そのなかに注ぐ。
そしてミルクを好みの量加える。
それからもちろんよくシェイクするのです。
で、これをグラスに移して飲む。美味い。
少なくともよく冷えた
アイス・ミルク・ティーになりますし、
飲んでいるうちに氷がとけることもありません。
そして当然のことながら
紅茶とミルクが完全に一体化している。
ここからよりいっそう
口当りが良くなるのではないでしょうか。

この小さな試みで、私は勢いづきました。
同じ要領でアイス・カフェ・オ・レがつくれないものか。
やってみました。
いつものようにドリップコーヒーを淹れる。
次にシェーカーに氷とミルクを注ぐ。
充分シェイクした後で、グラスに移す。
やはり、いつもよりキメが細かいように思うのです。
第一、氷を気にすることなく飲むことができます。

しかしそれにしても
シェイクの力は偉大です。
コーヒー、ミルク、氷、
この三つを混ぜることで、
まったく新しい第三の飲みものを
生んでくれるのですから。

突然ですが、今の時代にもっとも必要なことも
実は「シェイク」ではないでしょうか。

新奇と古典、正統と異端、保守と前衛・・・。
まったく異なった要素を、
大きなイメージ上のシェイカーに入れて、
念入りに混ぜる。
するとまったく新しい価値が生まれるはずです。
新しい時代のキイ・ワードは
「シェイク」ではないでしょうか。


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