服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第368回
パンツの細部を研究しよう

今あなたの履いているパンツのプリーツは
何本ありますか。
「なにをオロかなことを、
プリーツは1本に決っているじゃないか。」
あるいはそうおっしゃるかも知れませんね。
でも、この言葉の問題とても難しいのです。

一般にパンツの中央、
その前後につけられるすじのことを
「プリーツ」と言います。
そしてウエストバンド下の小さなヒダのことを
「タック」と言います。
けれどもこれは両方とも和製英語なのです。

英語では前後のすじのことを
“クリース”と呼びます。
そして小さなヒダのことを“プリーツ”と呼ぶのです。
そして“タック”tackといえば、
専門用語で「ズボン前開き部裏の当布」の意味になります。
“タック”tuck(「つまみひだ」の意味)とは
また違う言葉です。

さて、もう一度ここで整理しましょう。
たいていのパンツには1本か2本の
“プリーツ”(タック)があり、
その“メイン・プリーツ”とつながるように
“クリース”(プリーツ)があしらわれます。
これで少しはすっきりとしたでしょうか。
ついでながら“プリーツレス”といって、
まったくヒダを取らないスタイルがあることは
言うまでもありません。

ふつうウエストはヒップよりも細い。
この身体に合わせてパンツを仕立てるわけですから、
当然、細い部分と太い部分が必要になる。
これをより美しいデザインとシルエットに仕上げる方法が、
“プリーツ”(タック)なのです。
ですから細身のパンツには省略されることが多く、
ゆったりとしたパンツには
必ずプリーツが付けられるのです。
つまりプリーツの有無は
パンツのシルエットと密接な関係があります。

なおプリーツには大別して
「内ヒダ」と「外ヒダ」とがあります。
これは好みの問題です。
洋服屋でもまったく意見が分れるところ。
ただし歴史的に眺めるなら、
内ヒダのほうがよりクラシックであり、
外ヒダのほうが新しいデザインなのです。
いずれにしてもこのヒダが
美しく畳込まれた状態で穿くことがおしゃれなのです。


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2003年10月5日(日)

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