服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第367回
アトキンソンズを締めてみよう

「アトキンソンズ」という名前を聞いたことがありますか。
「ああ、あれか」という人は
かなりのファッション通でしょう。
実はこれ、ネクタイ・メーカーの名前なのです。
本社はアイルランドのダブリンにあります。
1820年創業で、
その頃から手織りの生地を作っていたと言いますから、
古いですね。

アトキンソンズのネクタイはすぐに分ります。
その多くはレジメンタル・ストライプなのです。
しかもその生地の多くはアイリッシュ・ポプリン。
アイリッシュ・ポプリンの
レジメンタル・ストライプといえば、
もうアトキンゾンズなのです。
こんなネクタイ・メーカーも珍しいのではないでしょうか。

では、アイリッシュ・ポプリンとは何か。
これはタテ系にシルク、
ヨコ糸に梳毛糸(ウール)を配して織った畝織地なのです。
つまり今時珍しい交織地ということになります。
その結果、ざっとシルク55%、
ウール45%くらいの混率になります。
この生地ははるか遠い昔、
中国で織られていたそうですが、
19世紀初頭からアイルランドでも織られるようになった。
だから“アイリッシュ・ポプリン”の名があります。
ポプリンは一般に、美しく目の詰んだ畝織地のことです。

このアイリッシュ・ポプリンの面白いところは、
今ではほとんどネクタイ以外に使われないのです。
このことを裏返すなら、
ネクタイに最適の生地なのです。
結びやすく、適度なハリがあり、
しかもシワにならない。
ネクタイは結目のボリューム感が
生命(いのち)なのですが、
その量感をいともたやすく表現してくれるのです。

アトキンソンズのタイを1本持っていると、
楽々として着こなしの幅が広がるでしょう。
新橋の「ニュー」(TEL:3501-9563)で
そのタイを買えます。1本1万円位。
なんでも世界中で一番種類が揃っている店だそうです。

白いシャツを着、好みのアトキンソンズのタイを締め、
その上から黒のカーディガンを羽織る着こなしを
してみようと思っています。


←前回記事へ

2003年10月4日(土)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ