服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第269回
小さな勇気が欲しくなりました

勇気はあるほうだと思いますか。
この間私は自分が勇気がないことに気づきました。
駅で、駅の階段で。
そこはたまたまエスカレーターのない階段で、
ベビーカーを持った若い母親が登っていたのです。
重そうです、大変そうです。
「やあ、お手伝いしましょう」と、
私が片方を持ってあげれば、
楽に上まで登れたでしょう。

でも、私はそのちょっとしたお手伝いが出来なかったのです。
たったそれくらいの勇気もなかった。
たしかに気持はあるのだけれど、
それが行動に移せなかった。
いや、勇気というよりも、
気恥かしさのほうが勝ってしまったのでしょう。

やってあげたいのだけれど、出来ない。
言いたいのだけれど、言えない。
―こんな時のために
なにか良い方法はないものでしょうか。
たとえばですね、あらかじめ自分用の
メッセージ・カードを用意するのはどうでしょうか。

名刺をタテ長にしたくらいのサイズで、
その頭に1行メッセージが書いてある。
「なにかお手伝いしましょうか」「係員を呼びましょうか」
あるいは「少しは英語話せます」
というのも良いでしょう。
場合によっては12枚で1セット位用意しておく。

タテ長の用紙ですから
胸ポケットに入れておくと、
一番上のメッセージの部分が少し出る。
男のポケッチーフみたいな感じですね。
必要がない場合には
白無地に裏返しておくことも出来るでしょう。
そしていざという時には、
12枚のカードから最適なメッセージを選んで表示する。
そして次に言葉をかけ、さらには行動に移す、
という順序なのです。
どうです、名案ではありませんか。

でも本当は、メッセージ・カードが
どれほどの効果を発揮するかは分りません。
けれども私自身がメッセージ・カードを用意することで、
心の準備ができるだろうと思うのです。
私の心の弱さを強くする効果はあるでしょう。
今度、階段でベビーカーを見たら、
ぜひ手を貸してあげようと思います。


←前回記事へ

2003年6月19日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ