| 第116回無地調ツイードで楽しい着こなし
 ドニゴール・ツイードという生地があるのを知っていますか。たいへん古いツイード地の一種で、
 その昔、アイルランド北西部、ドニゴール地方で
 織りはじめたところからその名前があります。
 ツイードは今ではたいてい綾織(あやおり)で仕上げられます。でもドニゴール・ツイードは平織(ひらおり)であることが多い。
 歴史的に眺めれば、平織から綾織へと、
 いわば進歩があったと考えられています。
 その意味からもドニゴール・ツイードの年輪が
 推測されるでしょう。
 ドニゴール・ツイードの特徴は“スラブ”slubにあります。スラブとは「節糸」、「色糸」のことです。
 むかしはすべて手紡ぎでしたから、
 どうしても均一にならない糸がある。
 この「節糸」をそのままにして織ったところ、
 予期せぬ味わいが生まれた。
 そして今ではドニゴール・ツイード
 Donegal Tweedに
 欠かせない特色となっているわけです。
 ドニゴール・ツイードは時にヘリンボーン柄などに表現することもありますが、
 たいていはミックス調の無地。
 無地なのですが、よく見るとさまざまな色糸が混じっている、
 というものなのです。
 もっとも素朴で、もっとも野趣に富んだツイード、
 そうも言えるでしょう。
 ともかく柄とも言えない柄のツイードで、
 ところどころに色糸が飛んでいたなら、
 それがドニゴール・ツイードです。
 無地調ツイードの王様とも言うべきドニゴール・ツイードですが、
 柄物のシャツやネクタイ、オッド・ヴェスト(替えチョッキ)、
 あるいはオッド・トラウザーズを合わせるには
 実に便利な替上着となってくれるでしょう。
 一般にパターン・オン・パターン(柄と柄の組合わせ)は難しいとされるのですが、
 ドニゴール・ツイードの替上着なら、ほとんど自由自在。
 たとえばスモール・チェックの、
 ウール地のスポーツ・シャツに、
 ニット・タイを結んだりするのは、楽しい着こなしです。
 |