服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第45回
正しい手袋の扱い方について

手袋の買い方を知っていますか。
それはまず財布からお札を取出して数えることです。
「当り前じゃないか、買物に支払をしないでどうする!」
などと怒らないで下さい。
私の言っている意味は少し違うのです。

手袋をはめた手で間違いなくお札が数えられたなら、
それは極上の手袋であるというなによりの証明なのです。
まるで第2の皮膚のようにぴったりフィットしてくれる手袋ほど
素晴らしいものはありません。

やや乱暴に申しますと、
今、私たちが手袋だと思っているものは、
まず例外なくブカブカで手に合っていません。
革はかなり伸縮性に富んだもので、
手袋はもっとフィットしたものを選ぶべきなのです。
かつて手袋専門店では「ストレッチャー」と呼ぶ
細長い逆ピンセットのような道具で、
客の指に合わせて拡げたものなのです。

手袋といえば、ペッカリーが有名ですね。
ペッカリーは「ヘソイノシシ」の革で、
とくに伸縮性に優れているところから人気があるわけです。
ペッカリーの手袋は高価ですが、
本来はスポーティーな服装に合うもので、
ビジネス・スーツには不向きでしょう。

ごく一般的な言い方をするなら、手袋の色は靴の色に合わせる。
黒なら黒、茶なら茶というわけです。
しかし私としてはダークなビジネス・スーツに、
ミディアム・グレイの、それもスウェードの手袋などは
とてもおしゃれだと思います。
ただ、ひとつ欠点があって汚れやすいこと。
でも、スウェードの汚れは消ゴムでゆっくり丁寧にこすれば、
想像以上にきれいになります。

ところでぴったりフィットした手袋は
脱ぐのが面倒という人がいるかも知れません。
そこで正しい手袋の脱ぎ方。
脇のスリットを利用してバナナの皮のように、
半分くらいまで裏返す。
あとは両手を洗う時のようなしぐさをすれば、自然に外れます。
はめる時はもちろんその逆を行えば良いわけです。


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2002年11月7日(木)

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