| 第50回分かれたくても、分かれられない?
 もしあなたが隣国からいつ攻め込まれるか分からないような国に住むとしたら、
 どのように身を守りますか?
 中国と台湾との政治的な関係は、今年の旧正月に
 初めて香港を経由しない直行便が実現したかと思うと、
 先月には中国で反国家分裂法が成立したりして、
 緊張したり、少し緩和したり、
 の波を繰り返しているように見えます。
 大陸からは国家分裂を画策する反動分子の元締めと見なされている
 台湾の陳水扁総統(民進党)ですが、
 昨年3月に二選を果たした時、
 対立の連戦候補(国民党)との得票数はわずか3万票だったものの、
 2000年の総統初当選の時よりも大幅に得票数を伸ばしたのでした。
 一方、台湾國立政治大學の調査によると、
 2004年の時点で自分たちを「中国人」と思う
 台湾在住の人々は全体の13%と十年前に比べて半数以下に減り、
 残りは、半分が「中国人でもあり台湾人でもある」、
 後の半分が「台湾人」と答えたということです。
 貿易のなかに占める対中国の割合が2000年以降急激に増加するなかで、
 人々の意識は「一つの中国」からだんだん遠のき、
 いよいよ独立への気運が高まるかと思えば、
 昨年12月の総選挙では、
 独立に反対する与党国民党が過半数を維持し、
 陳水扁総統は中国との対話再開を希望する
 穏健な方向へ路線修正を迫られたのでした。
 2000年以降に両岸の往来が活発になったのは経済的な理由によるもので、
 特に若い年代の台湾の人々にとって、
 「台湾人」であるか、「中国人」であるかの選択は二の次なのです。
 問題は、民主的で自由な暮らしを維持したい一方で、
 どうやって中国を刺激しないようにするか、
 そのバランス感覚が選挙結果に現れています。
 「いざという時、国は頼れるものだ」と思っている日本人と、
 「国は我々の生活の邪魔をしないでもらいたい」
 と思っている台湾人、
 このような認識の違いも理解して付き合っていく必要があります。
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