| 第25回開発が少しでも遅れると・・・すぐ周回遅れに
 パソコンメーカーでは、一つ一つのモデルの開発にコードネームを付け、
 プロジェクトとして管理していました。
 そのプロジェクトごとに
 我々のセンサーモジュールを新規採用してもらうための営業活動は
 「デザイン・イン」、と呼んでいました。
 プロジェクトを勝ち取るためには、
 顧客の様々な部門、開発や品質保証、
 購買部門からの信頼を勝ち取ることが不可欠でしたが、
 まず、製品技術仕様の要求をクリアすることが何より大事でした。
 デザイン・インの進め方としては、まずサンプルを顧客に提出して、
 モジュール単体の基本的な機能(ハード、ソフト)が
 正しく動作するかチェックしてもらい、
 次に製品の信頼性をテストします
 信頼性試験では、
 温度や湿度が極端に変わっても問題なく作動するか、
 落っことしてしまったり、強く押されても壊れないか、
 誤って大量の電圧がかかっても壊れないか、等をテストして、
 それらをパスすると実際にパソコンに組み込んで、
 システムとして正常に動作するかどうかを試験します。
 これをトライアル・ランと呼んでいました。
 パソコンの性能・機能向上のスピードは非常に速く、モデルチェンジは約3ヶ月ごとのサイクルで行われていましたが、
 デザイン・インでは、特にハードの信頼性試験や
 ドライバーソフトの動作・互換性チェックに時間がかかり、
 全てのプロセスを完了して量産に漕ぎつけるのに
 約半年はかかりました。
 新規参入者としては、新しいプロジェクトに採用検討してもらうために、
 他社にはない新しい性能や機能をアピールしたいところでしたが、
 センサーテック社から引き継いだ現世代のモジュールは
 既に半年の間改良されておらず、
 我々がこれから始める新製品の開発を待っていると
 半年から一年間は新製品を投入できないことになるのでした。
 また、デザイン・インには約半年かかるため、
 実際に売り上げにつながるのは
 最悪一年半以上経った後になることが見込まれました。
 これは、追っかける身にとって、
 極めて大きなハンデと言えるのでした。
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