| 第22回面子(メンツ)を重んじる人たちは自分の非を認めない
 営業開始したわが台湾小倉科技に、早速やっかいな問題が持ち上がりました。
 コンサルタントであるビンセント李(リー)が、
 営業引継ぎのための顧客訪問を終えた後、
 あまり会社に姿を見せなくなってしまったというのです。
 我々が買い取ったセンサーモジュール事業に、以前からプロジェクトマネージャーとして携わっていたことに期待して、
 現地の給与水準からみて
 倍以上のコンサルタント料を払っていたのに、
 引継ぎ以外のことはコレといってしない、というのでは、
 会社設立を機にごく普通の給料で正社員になってもらった
 もう一人の台湾人である、
 リチャード譚(タン)さんに申し訳が立ちません。
 私は仕方なく拙い英語を用いて、我々が彼、ビンセントの仕事のアウトプットに満足していないこと、
 もし改善がみられないようなら
 コンサルタント料を見直すことも考えざるを得ない、
 という内容の電子メールを送りました。
 それに対して、ビンセントから猛烈な反対意見の電子メールが送られてきました。
 自分は契約に見合った仕事をこなしている、
 おまけに総経理候補まで紹介してやったじゃないか、
 他社からは非常に高い給与レベルでの
 採用オファーが来ているんだぞ、等々、
 いかに自分が有能かつ有望で契約料金に見合う価値があるか、
 ということを延々と文章に書き連ねてありました。
 今でも、人を評価したり、その評価を面と向かって伝えたりすることは
 私にとって非常に気が重く難しいことですが、
 面子(メンツ)を重んじる中華系民族の人たちに、
 公然と自分の非を認めさせることが
 いかに不可能に近いかということを、
 最初に知らされた出来事でした。
 結局、高い授業料を払わされたうえに、ビンセントは早々と他の会社への就職を決め、
 わずか一月あまりで我々のもとから去って行きました。
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